さまざまな側面がある韓国の対日感情

韓国人とある程度深く接した読者は、彼らの次のようなホンネに気づかれると思う。

「寿司も日本観光も好きな我々は反日でなく、日本とよい感じでつきあっている。なのに日本に嫌韓論がある。日本がおかしくなった」
「もう政府・国家の時代じゃない。日本は古い。民間交流を進めれば何の問題もない」
「日本は歴史の真実をごまかそうとする。力が落ちて焦っている。だから中国韓国とうまくいかない」

こういうときに、本書が読者の皆様の参考になればと思う。このような議論を避けるのでなく、大いに対話し日本の見方を伝えていただきたい。そうした作業があまりに少なかった。韓国側と真摯しんしな対話が進み、相互理解が深まればと希望する。

日本人がえっと驚くような日本観が韓国に多いのは事実だ。同時に、「日本歌謡カラオケ教室」があり、東京・大阪・福岡・沖縄や温泉観光が好きで、若い人が週末気軽に来てくれる国も、他にあるまい。「中韓連携」を支持する大学院生が「日韓連携」支持より多い国であると同時に、90年代初めまでは安保意識が高く、日本に北への警戒や国家安保を説く国でもあった。それが韓国である。

日本としては、韓国の色々な面を把握すべきだし、「足して割り」、「相殺して」ポジションを薄めたり沈黙したりするのでなく、根幹を見つつ、それぞれに発信・主張し、連携・協力していくのがよいだろう。

「韓国はどうしようもない」とあきらめてはいけない

「なぜそうなるのか」を、韓国社会の変化や心理や対立構造を踏まえて把握した上で、どう働きかければ好ましい方向(日本にとって、そして韓国にとっても)に進むのか、どういう要因でうまくいかないのか、逆に、よい案が来たとして、それで韓国内を通せるのか。じっくり見きわめて検討するのが望ましい。

道上尚史『韓国の変化 日本の選択 外交官が見た日韓のズレ』(ちくま新書)
道上尚史『韓国の変化 日本の選択 外交官が見た日韓のズレ』(ちくま新書)

「韓国はどうしようもない」と冷笑するより、省内外のプロの意見に耳を傾け、冷静な把握と策の検討に時間を使うのがよい。韓国内の各界の意見の動向や論調を、また個々の事象の底に流れる発想や韓国内の力関係を把握しつつ。

外交に通じた方の中にも、「日米同盟、米韓同盟という外交安保の基盤があるから、大丈夫」と見る方がおられる。だが、残念ながらそういう状況は、過去のものになってしまった――と、近年(韓国在勤時)私はよく感じた。韓国はそれだけ手間ひまかかる、ラクはできないのだ。無視したり適当に受け流したりすることが、日本と東アジアにとってよいならそうすればいい。だが、そうではない。不要な妥協はすべきでない。

そのためにも、より深く把握したうえで、これまでより効果的にかつ粘り強くものを言っていくのがよい。

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