30代の女性は小さい頃から、母親に兄妹差別を受けてきた。兄を王子様のように育てる一方、妹である女性を家来や召使のように扱った。大学進学時の学費(奨学金)は、女性は水商売の仕事をしてまで自力で返したが、兄の分は母親が一括で払った。2台の新車も買い与えた。母親は今、70代。女性は「今後、母が終活するにあたり遺産を平等にわけなければ完全に縁を切る」と宣言する――。
日本の女性の肖像画
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【前編のあらすじ】現在30代の女性は小さい頃から、母親にDVを受けてきた。母親の実家の婿養子になった父親もヒステリックな母親の餌食になり、その仕打ちに耐えかねて失踪してしまう。その後、女性へのDVはエスカレート。母親の地雷を踏むと、長時間折檻された。そうした歪んだ家庭環境は長期間続き、第三者に口外することができないタブーになった――。

大学進学

幼少期より母親からDVを受けた黒島禎子さん(仮名・30代)には2歳上の兄がいる。母親は跡取りである兄を甘やかす一方で、暴言・暴力の対象にしたり、部屋に勝手に入り込んで探ったりした。そうしたプライバシーを侵す行為に反発した兄は大学に進学して実家を出たものの、下宿先の住所を教えなかった。ただ、家賃や大学の学費、生活費の仕送りは母親まかせという中途半端な反抗ぶりだったため、すぐに住所はバレてしまった。

さらに、自動車の免許取得費用も、その後の新車購入も母親持ち。しかし、納車された直後にスピード違反で免許取り消し処分になるも、再度自動車学校に通う費用や罰金に加え、「スピードを出した時に危ないから」と、以前より大型で高い車種の新車を買ってもらったという体たらく。

一方、母親は兄のプライバシー侵害をした。友人がたまたま兄の大学の教員をしていたことなどから、母は兄の行動を逐一確認し、出席日数から交友関係まで全てを把握していたのだ。

大学在学中、兄は家出した女子高生を大学の友だちAとともに自分の下宿先に住まわせて、寝食の世話をしていた。ところが、兄は少女がAと交際を始めると3人の人間関係が悪化。そうした状況をAから聞き出した母親は、兄の下宿を訪れ、少女には家に帰るよう説得。異常なほど母親は、兄に対して過干渉だった。

大学を卒業すると、兄は地元で有名な一流企業に入社。ただ、実家には戻らず、1人暮らしを継続した。

一方黒島さんは、大学進学の際、母親から「あんたは勉強も他の習い事もダメだったんだからスポーツを続けるしかないのよ」と、体育大学を勧められたが、「福祉の勉強をしたい」と言うと、日頃汚れ仕事を小馬鹿にしている母親は呆然。しかし、黒島さんが「将来きっと家族の役に立つ」と言って、隣県の福祉系短大のパンフレットを見せて説得すると、一変して応援してくれた。

もちろん、これには裏があり、黒島さんの短大合格がわかると母親は、「あんたが付き合っていた彼氏とあんたを引き離すのに都合が良かったから応援しただけよ!」と告げた。

「私と彼氏を離したかった理由は、表向きは“娘の貞操の心配をしている”というていでしたが、(彼氏経由で)“自分の悪事が外部に知れると都合が悪い”とか、“娘の優先順位が自分から彼氏に変わったのが腹立たしい”とか、そんな理由が見え見えでした」

高校時代、黒島さんが彼氏の誕生日のために作ったケーキを母親にねだられたことがあった。「切れ端ならいいよ」と言うと、母親は「なんでこの私が切れ端だけなんだよ!」と怒鳴ってテーブルを思い切り蹴った。

また、黒島さんが高校の授業で作った作品や趣味の手芸品なども、「これ私にちょうだい! ほしいもん!」「私の分はないの!? 私にも作ってよ!」と言って、何でも強奪していった。だが、手に入ると満足し、そのまま忘れてしまうのか、大切にしている素振りはなかった。

「母は何かにつけて、私に対して『男好きだな』『あんたばっかり男と楽しそうにしやがって』とも言っていたので、娘がオンナになるのがとにかく許せなかったように思います。当時の彼氏や今の夫からもよく言われましたが、母からは、娘に対抗意識を持っている感じがするそうです」