30代の女性は幼少期から母親に筆舌に尽くしがたいDVを受け続けた。母親は息子には甘いところがあり、王子様扱い。一方、女性(娘)や婿養子の父親を家来のように見下し、暴言暴力を繰り返した。ある日、父は出張に行くと言って、失踪。2度と家に戻らなかった。残された女性は、その後――。
光の終わりに
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ある家庭では、ひきこもりの子供を「いない存在」として扱う。ある家庭では、夫の暴力支配が近所に知られないように、被害者の家族全員がひた隠しにする。限られた人間しか出入りしない「家庭」という密室では、しばしばタブーが生まれ、誰にも触れられないまま長い年月が過ぎるケースも少なくない。そんな「家庭のタブー」はなぜ生じるのか。どんな家庭にタブーは生まれるのか。具体事例からその成り立ちを探り、発生を防ぐ方法や生じたタブーを破る術を模索したい。

今回は、兄妹差別を受けて育った女性の事例を紹介する。彼女が物心ついたとき、すでに2歳上の兄は王子様のよう。母親や祖父は兄の召使いのように言われるままに動き、妹である女性や祖母、父は奴隷のように扱われていた。彼女の家庭のタブーはいつ、どのように生じたのだろうか。タブーのはびこる家庭という密室から、彼女はどのように逃れたのだろうか――。