調査概要/プレジデント編集部で、日本CHO協会に登録する人事関係者、人材会社関係者約1800人を対象に調査を実施。期間は2010年3月12~19日。有効回答者数は241人。回答者は各業種ごとに、業績などを基に選出した企業の中から1社とその理由を選択。さらに、各業種で選択した企業の中から最も働きがいのある企業1社を選択した。
【業種別ランキング:食品】「達成感」のサントリー、「連帯感」の味の素/1位のサントリーが選ばれた理由のうち、最も多かったのが、「働く人が、仕事に達成感を感じて、活き活きと働いている」と「経営陣が信頼されており、組織へのコミットメントが高い」(約4割が選択)。2位の味の素の最多理由は「働く人が連帯感をもち、お互いに協力する雰囲気が強い」(約4割)だった。

しかし、今後の日本人の働きがいを考えると、従来のように単に長期的メカニズムのみでは支えきれなくなっている。

まず、ポストが減りつつある。そのため昇進によって人を引っ張るというメカニズムが機能しない。また、お金で釣るといっても、2010年の春闘で明らかになったように給料はもはや上がるものではなく、下がるかもしれないという認識が共有されつつある。

その意味では、仕事を通じて働きがいを提供する新たな仕組みを構築する必要に迫られているのである。そこで私が提唱したいのが長期性を加味した「エンパワーメント」だ。モチベーションを重視した仕事とキャリアの与え方である。

残念ながら、エンパワーメントという言葉は誤解されて使われることが多い用語である。よく「権限委譲」や「仕事を任せる」ことと混同される。経営学辞典を見ても、「現場の社員の裁量を拡大する」などの単純な定義がある。

本来、エンパワーメントとは、文字どおり「パワーを与える」ことである。自律的に目標が達成できるようになるための支援といってもよい。そのためには、権限を与えたり、自由度を高めたりするだけではだめだ。ただ権限を与えても、課題を実行するための資源や能力が備わっていないと、結局は失敗に終わる可能性が高い。いうなれば、働く人に、自律的に判断し、行動できるためのパワーを与えるのが、エンパワーメントである。