調査概要/プレジデント編集部で、日本CHO協会に登録する人事関係者、人材会社関係者約1800人を対象に調査を実施。期間は2010年3月12~19日。有効回答者数は241人。回答者は各業種ごとに、業績などを基に選出した企業の中から1社とその理由を選択。さらに、各業種で選択した企業の中から最も働きがいのある企業1社を選択した。
【業種別ランキング:コンサル・人材】外資に交じって奮闘の野村総研/マッキンゼーが全体の3割超の票を集め、首位に。最多理由は、全体の約半数が選択した「働く人が自分の仕事にプライドをもって働いている」。2位の野村総合研究所でも、同理由を選択した人が最も多かった。なお、7位のIBMビジネスコンサルティングサービスは、2010年4月1日より日本IBMと経営統合している。

最後にエンパワーメントによりモチベーションを高めるうえで考慮しなければいけないのが、それによって発生する経営リスクである。

リスクとは、組織が個別最適に陥ってしまうことである。自分で勝手にやってもいいよ、というだけでは、その人が会社の方向性に合った働き方をするかどうかはまったくわからない。極端にいえば、遠心力が働くために会社がバラバラになってしまう恐れがある。

そうならないためには、個をまとめ上げるビジョン、価値観、理念を共有することが極めて重要になる。トップマネジメントがそうした世界観を描き、従業員にいかに浸透させていくかが非常に重要であり、また、それは働きがいの観点からも大切な要素である。

米系企業はその点を十分に認識しており、理念型のリーダーが多い。グーグルやP&Gジャパン(総合ランキング3位)などでも、理念の浸透を図る活動を日常的に展開している。とくにP&Gなどはグローバル化する過程でダイバーシティを推進しようとしている。そのため逆に理念が今まで以上に重要であるという認識が強く、グローバル規模での理念の共有化に力を入れている。

【業種別ランキング:エネルギー・鉄鋼】仕事にプライドを持つ東京電力/1位に東京電力が選ばれた最多理由は「働く人が自分の仕事にプライドをもって働いている」(約5割)。約3割が「働く人が連帯感をもち、お互いに協力する雰囲気が強い」と回答。JFEHDと新日本製鉄が僅差で2位、3位に(最多理由は東京電力と同じ)。上位3社と答えた人が全体の6割を超えた。

日本では、ホンダ(総合ランキング2位)も理念型企業といえるだろう。ホンダは働く人たちに与えられている権限が高い。各事業部門の独立性が高く、事業部門のトップは、同じ事業部門から選出する仕組みを取っている。エンパワーされた組織といえよう。しかし、その半面、全社的な視点をもった人材が育たないという問題も発生しやすい。

それを防ぐために、人事部は理念形成や理念共有に非常に力を入れている。研修の多くを理念共有に費やしているといわれるほどだ。また、ホンダイズムを数カ国語に翻訳し、グローバルでも同じような活動を展開している。

同じくグローバル企業の代表格であるパナソニック(総合ランキング5位)には、松下幸之助の理念が根付いていたが、幸之助の言ったことを中村邦夫会長が現代版に翻訳したことが、会社の再生の原動力である。中村会長が実施した一連の機構改革も素晴らしいが、何といっても松下幸之助の理念を現代版に翻訳し、求心力を維持しなければパナソニックの成功はなかっただろう。