世界最大の消費財メーカーのプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は新卒重視による「内部昇進制」をグローバル規模で実践している。内部で育成できない人材以外はすべて新卒者を採用し、新入社員時代からCEOになる人材を育てていくという方針を掲げる。
様々な制度やプログラム、システムやデータベースを世界共通で標準化。同じトレーニングを受けて企業の目的、価値観、仕事の進め方を共有することでお互いの信頼感を醸成し、チームワークによる効率的、効果的な仕事ができることが、内部昇進制の最大のメリットだ。
入社後はワーク・アンド・デベロップメント・プラン(W&DP)と呼ばれる自律的なキャリア形成と適材適所を可能にする仕組みを導入している。具体的には過去1年の業務成果と今後1年の業務計画、それと短期(1~2年)、長期(5~10年)にわたる社員自身の希望するキャリアについて記入。上司はそれを見て、前年の成果に対する総括評価を行うと同時に、業務計画を遂行するうえでの本人への期待や改善点を含めて総合評価を行う。さらに部下に対し、育成すべき能力と、それに必要な業務の経験と受講すべき研修内容を記した能力開発計画を作成する。
また、上司の人事評価項目には、部下の育成や組織風土の改善などの組織能力開発上の責任が組み込まれている。上司は自分が担当するビジネスの成長だけではなく「それと同じくらいに自分の部下を自分よりも優秀なマネジャーに育てるべく毎日努力しているかということで自らの業績が評価される」(同社人事担当者)仕組みだ。
守島基博教授は「個々の社員をエンパワーメントし、自己有能感を高めるための仕組みを徹底しているのが、P&Gなどの外資系企業の優れた特徴」と指摘する。