堀場製作所(電機ランキング4位)も「おもしろおかしく」という理念を掲げている。事業ドメインを絞り込んでいる同社は、そのドメインのなかで仕事をしたい人を会長自ら採用し、ドメインのなかでは何をやってもいいよ、という仕組みをつくり上げてきた。また、社内に研究会を数多く組織し、会長自らフィードバックする仕組みも備えている。そういう意味では理念でまとめつつ、エンパワーも徹底して実践している企業である。
理念というのは一度つくってしまうと、金科玉条だと考えてしまいがちだ。しかし、すぐれたリーダーというのは、それを時代に合わせて読み直していく力をもっている。それがエンパワーメントを原動力とした企業変革期においては必要なトップマネジメントの力量なのである。
グローバル化が進むなかで、企業経営は、ますますエンパワーされた個人の、自律的な働き方がカギになる。また働く人にとっても、自律性の高い、エンパワーされた状態は高いモチベーションへと通じる。そのなかで、企業は、従業員が100%仕事にやりがいを見出せるように働きやすさも提供しなくてはならない。また、リーダーは世界観、歴史観、人間観などに裏打ちされた理念をもち、それを従業員と共有し、エンパワーされた個人を率いていくことが求められているのである。働きがいの追求は経営をも変える力をもっているのである。
※すべて雑誌掲載当時
(溝上憲文=構成 増田安寿=撮影)