5年の経験があれば「ベテラン」と認められる

確かに経験はないよりあった方がいいが、フィンランド人が必要だと考えている「経験」の年数は日本よりも短い。企業でも5年の経験があれば十分ベテランの部類に入ってくる。何十年の下積みをしてやっと認められるというよりも、ある程度全体の流れが把握できていて、その人が優秀で素質があるとわかればいい。だから30代で頭取や取締役に就くことも、学校の校長をつとめることもある。

政治においても2~3期目で閣僚になることは普通だ。党内の力関係や誰が役職に就くかといったことは、当選回数で決まるのではない。選挙での得票率やそれまでの党内での人気、実力、そして本人の適性がカギとなる。性別や年齢も関係ない。

年功序列ではなく、若者に期待

現在、国会議員の平均年齢は40代半ば。いくら実力主義とはいえ、いくつかの党の党首に30代が就いているのはなぜか。それは、彼女たちに寄せられている変革への期待の表れだろう。グローバル社会の進展に様々な技術革新、生活や価値観の多様化と、私たちを取り巻く世界は刻々と変わっている。どの党も存続のためには変化に対応でき、次世代を担う若者を取り込む必要がある。そういった中で、各政党は象徴となる若いリーダーを求めているというわけだ。

堀内都喜子『フィンランド 幸せのメソッド』(集英社新書)
堀内都喜子『フィンランド 幸せのメソッド』(集英社新書)

ただし、彼女たちは若さだけが理由で党首に就いているわけではない。教育を十分に受け、行政学や政治学、社会学を学び、10代、20代前半から党の活動に携わってきた経験もある。

フィンランドでは早ければ15歳頃から党の青少年部に入って活動することができ、高校生などが政治活動に関わることは決してタブーではない。党にとってみれば、若い青少年部員たちは若者世代にリーチするための大切な媒介者であり、多少過激であっても、若い人が持つ柔軟な発想が党に刺激を与えてくれることもある。また、彼らは未来の政治家の卵でもある。

マリンも20歳から党に入って政治に携わっているし、他の党首たちも10年以上政界でキャリアを積んできている。当選回数は多くなくとも、全くの素人というわけではなく、ある程度の時間をかけて地道に党の内外で信頼と人気を勝ち取ってきているのだ。

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