フィンランドはOECDの学習到達度調査「PISA」で、毎回高順位にあり、「教育大国」として知られている。ライターの堀内都喜子さんは「フィンランドは学校教育が充実しており、日本のような塾はほとんど存在しない。それは、貧富によって受けられる教育に格差があってはならないという考えがあるからだ」という――。(第2回)

※本稿は、堀内都喜子『フィンランド 幸せのメソッド』(集英社新書)の一部を再編集したものです。

手を挙げながら学童群
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一つのスポーツを極める日本、複数を楽しむフィンランド

体を動かすことを推進するフィンランドの学校だが、部活動は基本的にはない。授業以外のスポーツや文化活動には、習い事として学校外で取り組むことになっている。

子どもたちは学校が終わって帰宅してから、練習やレッスンに出かけていく。練習の頻度はピンからキリで、厳しいところやトップレベルを目指すような場合は、毎日何時間も練習が続くが、週に1~2度程度のものもある。複数の習い事やスポーツをゆるく長く続けて、一生の趣味にする場合もある。

フィンランドの友人と話していて「日本では一つの種目に絞って、毎日練習することが多い」と言ったら、「どうして? 意味がわからない。夏に一つ、冬に一つでもいいし、可能性を一つに絞らないでいろいろ楽しめばいいのに」と言われたこともある。

フィンランド人は1日に多くの時間をスポーツに割く

思えば、スポーツだけでなく音楽にしても、日本では一つに絞ってその道を究めるということが称賛されるが、フィンランドではもっとおおらかで、複数のことに興味があったら、それぞれを好きなだけ楽しむ傾向がある。それに、スポーツはオリンピックやトップレベルを目指す競技スポーツが全てではなく、健康やストレス解消を目的としている人も多い。

だから仕事と趣味でも、両方を楽しんで趣味を後に本業にする人もいるし、スポーツでも複数の競技で成功する場合もある。そこにワークライフバランスが整っていることも加わって、1日にスポーツを楽しむ時間は、OECDの統計によるとフィンランド人が世界トップクラスだ。

一部の親からは、学校で部活のようなものをやってくれると楽なのにという声もある。習い事が徒歩圏内にあるわけではないので、車で送り迎えをしたり、食事の時間を習い事のスケジュールに合わせたりと、いろいろな調整が必要だからだ。

現在、多くの自治体では、国の援助を受けて学校内の週1~2回のクラブ活動が試験的に行われている。基本的に参加は自由で、無料。クラブ活動の監督は必ずしも教師ではなく外部に依頼し、活動費は国や自治体がカバーする。親のためというより、子どもたちが授業以外の楽しみや新たな趣味を見つけてウェルビーイングを向上させることが目標だ。