在宅の利点を生かした授業も

遠隔授業といっても、常にオンラインでつないで授業が行われていたわけではない。「今日は教科書の○○ページを読んで、次の課題をやりなさい。回答は携帯で写真を撮って先生に送ってください」といった自習型タイプの授業や、クラスメイトと通信アプリで相談して教師の課題や教科書にある問いかけに回答して送るものも多くあった。環境が整い始めてからは教師とオンラインでつないで授業やホームルームも行われた。

自宅でビデオオンラインレッスンを勉強する
写真=iStock.com/Ridofranz
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在宅の利点を生かした授業もあった。例えば算数では家の面積を測るとか、体育では近所を散歩して見つけた植物の写真を送るとか、家で料理をつくる、自転車のメンテナンスをするなど、教師の創意工夫でより生活に密着した、より実践的で、家族とも容易に協力できる授業や課題も見られた。

当初はトラブルも多くあったが、試行錯誤を重ねていくうちに、教師も子どもも親も遠隔授業に慣れていったようだ。またはじめは完全に遠隔としていたものの、状況に応じた柔軟な対応も取られるようになっていった。例えば、どうしても親が外で働かなければならない家庭は、低学年の子どもたちは必要に応じて学校に来てもいいことになった。自治体によっては給食を用意したところもある。

遠隔授業で教師への感謝の気持ちが芽生えた

教師の負担は非常に大きかったが、アンケート調査によると、子どもの多くは遠隔授業に満足したようである。また、親からは教師への尊敬の念が増したとの声が多い。親も多くが在宅勤務になり、子どもたちと同じ空間で長時間過ごす中、毎日大勢の子どもたちと連絡を取り、根気よくわからないところを教えたり、飽きさせない授業の工夫をしたりする教師に、改めて感謝する気持ちが生まれたようだ。

ただ、良かったことばかりではない。問題のある家庭の場合、子どもたちのウェルビーイングに悪影響が出たり、学力の落ち込みがあったとの調査が出ている。

2020年の春は、約2カ月ほどで感染状況が落ち着き対面授業に戻った。その後は、義務教育は対面授業を基本としているが、濃厚接触の疑いで自宅待機になった場合や、感染が拡大した際には、一時的に遠隔授業に切り替わっている。