ロシア隣国のフィンランドは、これまで中立国の立場を守ってきたが、ウクライナ侵攻を受けてNATO加盟を求める世論が高まっている。フィンランドに住むライターの靴家さちこさんは「フィンランドは徴兵制なので、まもなく高校を卒業する長男は来年1月に軍隊に入り、軍事訓練を行う。もしロシアが攻めてくれば、それだけで済むのか、実戦に駆り出されることもあるのかと心配だ」という――。
ロシアとのバランス外交に徹していたフィンランド
1917年に独立を果たすまでロシアの支配下におかれていたフィンランド。ロシアとは約1300キロの国境を南北に接している。
第二次世界大戦中には冬戦争(1939~40年)と継続戦争(1941~44年)と、2度にわたって戦った経験がある。
冷戦時代は政治・経済面ではソ連の顔色をうかがいながら西側陣営の資本主義を維持し、軍事的には中立を保ち、対ソ友好政策路線に基づく外交に徹した。ソ連が崩壊し、1995年にフィンランドはEUに加盟したが、関係は変わっていない。
2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻を受けて、フィンランドはロシアを離れ、NATO加盟に向けて動いている。日本と同じくロシアの隣国であるフィンランドの現状をお伝えしよう。
経済も国の安全も脅かされるようになったロシアの隣国
人口わずか553万人のフィンランドでは、1億4410万人と約25倍もの人口を持つ隣の大国ロシア情勢が、ウクライナ侵攻以前から日々報道されている。
そんな中で、今回のロシアのウクライナ侵攻は、フィンランド人には「ついに一線を越えたか」という驚きと落胆を持って受け止められた。
「ロシア国民だってバカじゃない。そのうちプーチンを引きずり降ろして終わりにするだろう」という希望的観測もむなしく、長引く戦闘の様子を報じるニュースは「怖いからもう見ていない」という人もいる。
輸入エネルギーの半分以上がロシア産
ウクライナ侵攻以来、国民の不安や心配は、生活の基盤を支える経済から国の安全にまで広がってしまった。
まずエネルギー依存に対する不安が急速に高まった。