経済制裁、ロシアの市民生活への影響は
ウクライナに軍事侵攻したロシアへの経済制裁が始まって1カ月半が経ちましたが、どのくらい効果が出ているのでしょうか。
現在、砂糖の購入制限が1人当たり月に10キログラム。1.5リットルのサラダ油が1人10本と伝わってきています。4人家族なら、それぞれ毎月40キログラムと40本。生活に困る程度にはなっていません。
ソ連時代から七十数年、制裁をかけられ通しの国なので、助け合いで乗り切る精神がロシア人には根付いています。イランや北朝鮮の政権でさえ経済制裁では倒れないのに、ロシアには豊富なエネルギー資源と高い食料生産力があります。市民生活に制裁の影響が及ぶには時間がかかりますし、決定的な状態には至らないと思われます。
ロシアでデフォルトが起こる可能性はある
それでは、欧米からの経済制裁によって、ロシアでデフォルト(国が発行した国債の元本の返済や利子の支払いをできなくなること)は起こるのでしょうか。
実は制裁下でもロシアの経常収支は大幅な黒字が続いています。それは豊富な天然資源によるもので、各国が経済制裁を強化する現在でもロシアの石油・天然ガス収入は少なくとも1日に11億ドル(約1350億円)に達しています(4月8日・日経)。
3月2日、EU(欧州連合)と米国はロシアの複数の銀行を国際的な銀行間の決済システム(SWIFT)から排除する決定を下しました。ロシアがSWIFTから排除されれば、輸出の代金決済ができなくなりますので、ロシアに打撃を与えるという報道も多く見られました。
しかしSWIFTから排除されたロシアの銀行の中に、国営ガス会社ガスプロム傘下のガスプロムバンクは含まれていませんでした。ロシア産の石油・ガスに対する主要な決済手段となっているため、消費するガスの4割をロシアに依存するEUは及び腰なのです。
EUは4月5日にロシア産石炭を段階的に禁輸する制裁案も発表しましたが、やはり石油や天然ガスには踏み込んでいません。エネルギー資源の豊富なアメリカとイギリスはロシア産の原油や天然ガスの輸入をすでに禁止して1カ月が経ちますが、EUではこれ以上のエネルギーへの制裁は難しいでしょう。