アメリカの新たな制裁でついにデフォルトか

それから、欧米の経済制裁によってロシアは海外に保有する外貨が凍結されているため、深刻な外貨不足に陥るとの予測もありました。しかしプーチン大統領は、ロシア産天然ガスの購入代金をロシアの通貨ルーブルで支払うよう義務づけました。

これによって、買い手が送金した外貨はモスクワ外為市場でルーブルに両替され、エネルギー会社に支払われることになります。つまり外貨はモスクワ外為市場に流入することになります。

そもそもロシア政府は強力な力で、民間企業に入ってきた外貨を強制的に召し上げることだってできる。今でも民間企業に対して、外貨収入の8割を強制的にルーブルに換えさせています。

4月4日、アメリカ財務省は新たな制裁を発表し、いよいよデフォルトの危機が迫っていると報じられています。それは、ドルでの支払いが求められるドル建て国債の元本償還や利払いを、ロシア政府がアメリカ金融機関にあるロシア政府の口座から支払うことを認めないというものです。

ロシア財務省は、4月4日が期日だったドル建て国債の支払いについて、「米国の非友好的な行為のため」自国通貨ルーブルを送金したとし、「支払い義務は完全に満たされた」と強調しています。

しかし、ロシアが支払いの意思を持っているにもかかわらず、アメリカ財務省の方針によって実行できなかった場合でも、格付機関が正式にデフォルトと認める可能性はあります。なぜなら格付機関はアメリカが作ったゲームのルールの影響下の存在だからです。

デフォルトが起きてもロシア人はそれに耐えます。ましてプーチン政権が転覆に至る可能性はないでしょう。4月12日公開の記事でも書きましたが、プーチン大統領の支持率は83%まであがっています。国際社会は、経済制裁の効果を期待しすぎないほうがいいでしょう。

西側諸国が意図しなかった、制裁の意外な影響に背筋が寒くなった

ただ、ロシアの新聞やテレビを毎日、注意深く見ていて感じるのは、西側諸国からの経済制裁、経済的なデカップリング(切り離し)によって、ロシア人のマインドが内向きになってきているのではないかということです。その結果、恐ろしいことにロシア語世界における人の認識と西側世界の認識のギャップが起き始めている。

見ていて、背筋が寒くなったニュースがあります。ロシアは、アメリカがウクライナ国内で生物化学兵器を作っていると主張していますが、それを深掘りした解説です。「特定のスラブ系民族(ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人など)を対象に感染症を作るゲノム兵器の研究ではないか。アメリカは、ロシア人のゲノムだけ集めている」と、大真面目に語っているのです。

ザポロージエ(ザポリージャ)とチョルノービリ(チェルノブイリ)の原発を占拠した際も、ロシアは「ウクライナが放射性物質を拡散する『ダーティボム』を開発するのを阻止するためだ」と説明しましたが、本当にそう思い込んでいる節がありました。

チョルノービル原子力発電所前の放射線サイン
写真=iStock.com/tunart
※写真はイメージです

どちらも、西側ならフェイクニュースだと笑い飛ばすような話ですが、ロシア人はかなり真面目に信じているようです。私の経験から言っても、思い込みが激しくなったロシア人には独特の怖さがあって、行動が次第に暴力的にエスカレートするものです。国全体が一種の被害妄想の世界に入り始めているように思います。