部活動のないフィンランドでは教師の負担が少ない

しかし、部活動がないことは、教師にとっては大幅な負担軽減につながる。2018年のOECDの「国際教員指導環境調査」(TALIS)によると、中学校教師の指導時間数は日本が週18時間、フィンランドは20.7時間と日本の方が短い。しかし、総合労働時間となると、日本は約56時間なのに対してフィンランドは33.3時間と圧倒的に短い。調査国平均の38.3時間よりも少ないのだ。

内訳を見ると、日本では圧倒的に課外活動や学校運営に教師が費やす時間が多く、フィンランドは授業以外に費やす時間がOECD平均よりも少ない。学校運営に関わる仕事や事務処理は極力少なくして、各専門家にお願いする。スクールカウンセラーや給食の栄養士、事務担当者と連携は取るが、教師は基本的に授業に集中する。

この、教育に専念できるのがフィンランドの教師の良いところで、14~15時に授業が終われば、たとえ子どもがまだ学校にいても帰宅してしまい、授業の準備なども自宅で行うことも多い。掃除は外部の清掃担当者に任せる。

フィンランドにも担任に相当する教師はいるが、「連絡・相談窓口」という位置づけだ。あくまで学校と家庭の最初の窓口で、やりとりは電子連絡帳や電話を使ったりし、必要に応じて勤務時間中に対面での話し合いが持たれる。フィンランドにもモンスターペアレントやネグレクトなど問題はあるが、よほどの緊急事態ではない限り休みの時にまで対応する義務はなく、それらの問題には学校内外の専門家たちと連携し合って対応する。担任教師が1人で抱え込むことはない。

例えば、私の友人の子どもが、感情の起伏が激しく、親子関係、友人関係がうまくいかずにいた時があった。最初に親子の相談にのったのは担任教師だったが、その後はスクールカウンセラーと心理士、スクールナースが介入した。家庭にも、自治体から家庭支援の専門職であるファミリーワーカーが派遣され、解決に向けて親と子どもの両方とカウンセリングが行われたり、医療や心理の専門家との連携が取られたりした。

根本的な解決はなかなか難しいが、担任教師や親が自分たちだけで背負い込む必要はなく、チームで解決方法や対応を考えられるのは心強い。

地域の高齢ボランティアも教育に参画する

時には地域や学生の手も借りる。例えば支援の必要な子どもや授業のサポートにあたっては、教育に関心のある学生や研修生にもお願いし、目が届くように工夫する。コロナ前は、「学校おじいちゃん」「学校おばあちゃん」として地域の高齢者にボランティアで学校に来てもらい、授業が始まる前の朝の時間を一緒に過ごしてもらったり、読み聞かせをしてもらったり、図工や体育でサポートに入ってもらったりしていた学校もある。

ハッピーなボランティア祖母笑顔でカメラ
写真=iStock.com/Wavebreakmedia
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主に低学年の子どもたちが対象だが、双方にとって一緒に過ごす時間は楽しく、それが地域のコミュニティとの結びつき強化にもつながっている。