「経験者」という長所が短所に変わることも

これは「即戦力転職」という一般的な規範が持つ逆機能にほかなりません。この傾向は特に、同じ職種に転職したミドル層に強く見られました。

同じ職種で転職した人が、過去の経験を活かして次の会社でも即戦力になりたい、なれる、と意気込むほどに、職場で誰からも助けてもらえない傾向にあるということです。これは転職において極めてリスキーな状態です。

そうでなくても、日本企業には、年功的な秩序が生み出すエイジズムがあります。

中高年に対して、「歳をとっているのだからこれくらいできて当たり前」「指示を受けずに仕事を作れて当たり前」といった風潮は多くの職場で見られます。転職者に対しても、すぐに手を差し伸べることなく、「お手並み拝見」といった態度で静観しがちです。

小林祐児『早期退職時代のサバイバル術』(幻冬舎)
小林祐児『早期退職時代のサバイバル術』(幻冬舎)

経験を通じて高いスキルを持っていることは、条件のよい転職先を探す上ではもちろん長所ですが、その結果として組織に馴染めず、パフォーマンスも上げられないという状態につながりかねません。

「経験者」という転職プロセスでの長所が、いきなり短所へと変わってしまうというアンビバレンス(両義性)を持つのです。

さて最後に、中高年以降の幸せな転職のためのポイントを簡単にまとめておきます。ほとんどがこれまで議論してきた内容ですが、裏を返せば、これらのポイントを外してしまう転職の多くは、「失敗」につながっていってしまいます。

まさに今、早期退職をしようとしている方も、今の会社でいつまで働き続けるか不安な方も、参考にしてみてください。

*1 中原淳「『職場における学習』の探究」組織科学 48.2 (2014): 28-37.

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