アンラーニングする転職者のとるべき日常的な行動

それでも「いや、自分は自分のやり方で仕事をしたいんだ」「なぜ合わせなければいけないんだ」と抵抗感を持つ方もいるでしょう。しかし、それはアンラーニングの「転職した会社側に合わせる」という受動的な面だけをイメージしすぎかもしれません。

アンラーニングとは、「相手に合わせる」という受動的で受け身の態度だけを意味するわけではありません。それは、実際に転職後にうまく前職での行動を変化・調整している転職者の行動を見ればわかります。

例えば、わかりやすいのがコミュニケーション面におけるアンラーニングです。

コミュニケーションを転職後に調整するとき、「同僚の意見を積極的に聞きに行くようにした」「上司への態度には気を使うようにした」といった受動的な調整もありますが、逆に、「自分の意見ははっきりと言うようにした」「わからないことがあったら必ずその場で聞くようにした」といった能動的で行動的な調整も行っています。

転職後に価値を発揮するためには、ただ受け身で待ちの姿勢を貫くのではなく、これまでの経験やノウハウを積極的に出していくという面も求められます。

他にも、アンラーニングする転職者は、朝に新聞を読むようにしたり、まず同僚に挨拶するようにしたり、報告・連絡・相談を細かくするようにしたりするなど、極めて細かく日常的な調整を行っています。

中高年の転職は「即戦力」を目指してはいけない

いかがでしょうか。かなり細かく行動からコミュニケーションのとり方まで、これまでのやり方を捨て、会社や組織に合わせてチューニングしています。

こうしたアンラーニングを意識して行動に落とし込んでいくこと、そしてそのことに対して抵抗感を持たないことが中高年転職では特に大切になります。

逆に言えば、こうした調整を行おうとしないことこそが、〈変化適応力〉の低さを示してしまうことになるでしょう。

それでも、「いや、自分はどこの会社でも通用する専門スキルを溜めてきたから大丈夫だ」と思われる方も多いかと思います。確かに専門的な技術や経験こそが中高年転職の大きな武器であることは明白な事実です。

しかし、筆者らの研究ではさらに興味深いことがわかりました。

「自分のスキル・技術が入社してすぐに活かせる」と感じている人ほど、「同僚からの支援」を、「入社してすぐに実力を発揮しなければいけない」と感じている人ほど、「上司からの支援」を、受けられていなかったのです。

つまり転職者自身の「即戦力になれる/なりたい」という気負いが、周りからのサポートを受けられないことにつながっているのです。