働かないおじさん問題は、どの企業にとっても頭の痛い問題だ。新著『THE HOPE 50歳はどこへ消えた?』が話題の健康社会学者の河合薫さんは、「将来“働かないおじさん”になる人に共通する『思考態度』がある」と指摘する。現在は自分が優位にあると感じ、シニア世代に「給料泥棒」と辛辣な言動をしがちな若手社員ほど実は危ないかもしれない──。(第6回/全7回)

30代に「給料泥棒」扱いされる50代…

「50代の社員の扱いには、うちの会社でも手を焼いてますよ。でもね、30そこそこの若造が、まるで給料泥棒みたいに言うもんだから、無性に腹が立っちゃいまして」

こう話すのは700人の従業員を抱える企業の社長、高野さんだ(仮名、62歳)。

会社では50代社員を批判する側の社長さんが、家で若造=息子(某大手企業勤務、32歳)の辛辣しんらつな物言いに憤った。勢いあまって、「若手にはない底力がベテランにはあるんだ!」と擁護ようごしたものの、ついぞ息子を納得させることができなかったという。

ベテランにしかない底力──。

確かに、ある。

私自身、そう繰り返し訴えてきた。「50代をなめるなよ」と。一方で、若い社員たちがベテランを毛嫌いする気持ちも、痛いほどわかる。なにせ、生まれた時代がちょっとだけ違うだけで、就職できる会社も、稼げるカネも、雲泥の差がある。

何も書いていない名刺を持つ男性
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若手の本音「シニア社員は辞めてくれ」

“底力”の詳細は後ほどお話しするとして、まずは息子の圧勝だった、高野さん親子のやりとりからお聞きいただこう。

「久しぶりに息子と酒を飲みましてね。上司の愚痴をこぼす息子を、笑いながら聞いてたんです。会社員にとって、上司批判は最高に旨い酒のさかなですから。ああ、こいつもやっと一人前になったなあ、なんて思ったりしてね。

ところが、シニア社員の文句を言い始めた。“働かないおじさん”っていうだけなら聞き流せたんだけど、『コミュ力が低い』だの、『エクセルもまともに使えない』だの、『役職定年になっても、会社にいるとか意味あるのか』だのと、けちょんけちょんです。

挙げ句、なんて言ったと思います?『シニア社員が異動してくると迷惑だから、辞めてほしい』って」