「情報知」では若手には勝てないが、しかし

たとえばラジオ、テレビ、新聞、SNSなどのメディア、あるいは人から聞いた情報として知り得た知識は「情報知」。

情報過多社会に生きる若い世代に、シニア世代は情報知で勝つことができない。彼らの情報網は実に多彩で、常に情報をアップデートし、中には歩く「Yahoo!ニュース」のような若者もいる。

一方、経験知は、音の聞き分け方や顔の見分け方、味の違いなど「言葉にされていない知識」として身につくもので、自転車の乗り方を練習し乗れるようになった時の感覚なども「経験知」だ。

このような「経験知」の中に「暗黙知」がある。暗黙知には、その人の勘やひらめきなどの主観的な知識が含まれ、言葉にするのがきわめて難しい。

想定外の出来事に強い「アナログ・パワー」

暗黙知は「難しい相手との交渉」や「部下の心をつかむ」など特定の目標を達成するための手続き的な経験に加え、読書や映画鑑賞などで言語能力を高めることで飛躍的に伸びる。

仕事だけじゃダメ、勉強だけでもダメ。よく学び、よく遊び、よく働いた経験が暗黙知を豊かにする。そして、暗黙知が豊かなほど、想定外の出来事にうまく対処できるようになる。

“いい時代”を経験した50代会社員は、仕事も遊びも存分に満喫した世代だ。彼らの暗黙知はきわめて高い、と考えられる。と同時に、彼らは、上司のパワハラにも耐えた「たたき上げ世代」だ。

今ほど細かいマニュアルはなかったし、上司が丁寧に手取り足取り教えてくれることもなかった。このときの非効率でアナログな経験こそが、「おじさんの切り札」になる

人生後半生は「人格的成長」が10割

しょせんどんなに詳細なルールやマニュアルを作ったところで、そこに「人」がいる限り、網の目からこぼれ落ちる事態や事件が起こる。

そんなときに、現場の対応次第で、小さな事件がとてつもなく大きな問題になってしまったり、大問題になりそうな事件が意外にもすんなり片づいたりする。

が、これがまたややこしいことに、どんなに豊富な暗黙知をもっていようとも、それを生かすも殺すも本人次第。「人格的成長(personal growth)」のスイッチを本人が押さない限り、暗黙知=底力が発揮されることはない。