漁業協定についてもガルージン大使と話し合った

また、漁業協定についてもガルージン大使と話しました。日本とロシアの間には、漁業に関する決めごとが4つあります。

①サンマ、イカ、スケトウダラ等を対象とした相互入漁に関する「日ロ地先沖合漁業協定」

②ロシア系サケ・マス(ロシアの河川で生まれたサケ・マス)の我が国漁船による漁獲に関する「日ソ漁業協力協定」

③北方四島の周辺12カイリ(約22.2キロメートル)内での我が国漁船の操業に関する「北方四島周辺水域操業枠組協定」

④歯舞群島の一部である貝殻島の周辺12カイリ内において我が国の漁業者が安全にコンブ採取を行なうための「貝殻島昆布協定」

①から③は政府間の協定を基本とし、④は民間の協定で、交渉は年ごとに行われます。ガルージン大使に交渉の継続を訴え、大使も漁業交渉は別枠だと認めてくれました。

通例では漁が解禁されるのは、サケ・マス漁が一番早く、4月10日が解禁日になります。今年は交渉開始が4月11日になりました。ニュースでは、「ウクライナに侵攻したロシアに厳しい制裁を科す中での交渉は異例だが、(政府は)権益の確保を目指すことが重要だと判断した。北海道の漁業者らが実際に操業するには交渉妥結が必要だが、制裁に反発を強めるロシアの出方は読めず、協議は難航する恐れがある」(4月11日・共同通信)と報じられていましたが、日本水域における操業条件については4月22日に無事に妥結しました。

北海道 羅臼漁港
写真=iStock.com/dr-rodriguez
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厳しい日ロ関係で、首の皮一枚つながっている接点

5月初旬から日本漁船の操業が始まる予定です。解禁日まで、漁船は待機です。魚が入ってこなければ経済が動きません。市場、魚の加工屋さん、流通業者、小売業者、それぞれで働くパートの人たちなど、根室だけで何千人もが、収入をなくしています。この時期に獲れるのはトキシラズです。5月いっぱいが漁期ですから、無事妥結できて本当に良かったと思います。

漁業交渉は、日本とロシアが長年築いてきたパイプです。1950年代や60年代の厳しい東西冷戦期でも、日ソのサケ・マス交渉は毎年行われていたのです。現在の厳しい日ロ関係では、首の皮一枚つながっている接点だと言ってもいい。

3月21日のロシア外務省の声明では、「日本との平和条約に関する交渉を継続するつもりはない」としていますが、「現在の条件下では~」という留保があります。これは、「条件さえ変われば」交渉を再開する余地があることを示唆していると読み取れます。たとえ細くともロシアとのパイプをしっかり繋いでおくことは、とても大事です。