欧州は日米と連携してロシアに経済制裁を科しているが、天然ガスは対象外としている。なぜ天然ガスの輸入をやめないのか。エネルギーアナリストの前田雄大さんは「欧州は政策的に脱炭素を進めてきたため、ロシアへの依存か高まってしまった。無自覚に『プーチンの罠』にはまっている状態だ」という——。
脱炭素に全集中…欧州がハマった「プーチンの罠」
ロシアのウクライナ侵攻は現代社会が抱えるさまざまな問題を露見させた。安全保障はその代表格であるが、社会・経済システムに大きな影響を与える点で見過ごせないのが資源・エネルギーの論点だ。
対ロ経済制裁の中で、アメリカはロシア産の原油・天然ガスの禁輸を3月8日に発表した。もちろん、経済制裁は西側が連帯をして行わなければ効果は薄くなる。ブリンケン米国務長官は、欧州各国と事前に調整を試み、ロシアに対する資源・エネルギーの制裁でも欧州側に協力を求めた。
しかし、この対ロ制裁に同調できたのはイギリスだけだった。資産凍結や国際決済システムからの排除といった制裁では足並みを揃えることができたにもかかわらず、エネルギー分野だけは不十分な形になった。これには明確な理由がある。
EU各国は資源・エネルギー分野でロシアとの関係を断ち切れない弱みがある。これに深く関係しているのが、欧州の焦り過ぎた脱炭素戦略だ。欧州はある意味で「プーチンの罠」に完全にはまったと言っていい。それも無自覚のままに――。
脱炭素の主導権を握るためにロシア依存を進めた欧州
なぜ欧州は、国家存立の要であるエネルギーに関して、ロシアに致命的な弱みを握られることになったのだろうか。改めて振り返ると、資源・エネルギーに関するロシアと欧州の関係は伝統的に結びつきが非常に強いことがわかる。