仰天の「北海道の全権はロシアのもの」発言
ところで4月1日、ロシアの中道左派の野党「公正ロシア」のセルゲイ・ミロノフ党首が、こんなツイートをして、日本でも話題になりました。
〈日本はロシアに対して、繰り返しクリル諸島(北方領土と千島列島)に関する主張を繰り返してきたが、一部の専門家によると、北海道の全権はロシアにあるという〉
〈現時点でモスクワではこの話題は提起されていないが、東京の対決路線がどこに向かい、ロシアがどう対応しなければならないかは不透明だ〉
ミロノフ党首は、2001年から11年まで上院議長を務め、現在は下院の副議長です。プーチン大統領に近い存在ですが、これはミロノフ党首個人の考えでしょう。ロシアの総意であるとか、プーチン大統領の意向を受けた発言ではないので、気にする必要はありません。
ロシアでは、北方領土は第2次大戦後の正当な手続きにおいて手にした領土だというのが一般的な認識ですが、当然、その中に北海道は含まれていないからです。日本がアメリカに追随していると見れば、こんな跳ね上がった発言も出てくるということでしょう。
北海道に対するロシアの脅威は高まっているか
それでは、ウクライナへの侵攻が始まってから、北海道に対するロシアの脅威は高まっているのでしょうか。
3月10日から11日にかけてロシアの軍艦10隻が津軽海峡を通過し、14日には6隻が宗谷海峡を通過しました。しかし津軽海峡も宗谷海峡も、国連海洋法条約で定める「国際海峡」です。日本政府が特定海域と設定していて真ん中は公海ですから、他国の軍艦が通るだけなら問題はありません。たとえ領海であっても、無害通航権によって通ることが可能なのですが、日本はあえて領海から公海に変更したのです。津軽海峡も宗谷海峡も、領海を12カイリではなく3カイリに設定しています。
また、領空侵犯の恐れがある外国機に対して、航空自衛隊の戦闘機による緊急発進(スクランブル)をしていますが、ロシア機に対する自衛隊のスクランブル発進の回数は増えていません(図表1、2参照)。
懸念点としては、やはり漁業に関する問題です。日本水域におけるサケ・マス交渉は妥結しましたが、ロシアの排他的経済水域を日本の漁船が通る場合には注意が必要だということです。漁船は、風や潮の流れ次第で1マイルも2マイルも流されますから、うっかり入ってしまえば、「非友好国」となってしまった日本の漁船はロシア側から拿捕されたり、あるいは銃撃されたりする事件が起きる可能性も否めません。