私が非難決議に賛成票を投じた理由
プーチン大統領は何を考えているのかと、しばしば訊かれます。いま頭の中にあるのは、ロシアの安全を守り、強いロシアを取り戻す。その1点でしょう。ウクライナ全土を占領しようとか、ロシアに併合してしまおうという考えはないはずです。
「ロシアを擁護している」とか「プーチンの代弁者」だとか散々に叩かれている私ですが、それは違います。力による国家主権への侵害や領土の拡大は、決して許されません。ロシアが行っているウクライナへの武力侵攻は暴挙であり、民間人にも多くの犠牲者を出し、難民を生んでいます。21世紀の国際社会から非難されるのは、当たり前です。3月2日に開かれた参議院本会議のロシアへの非難決議で、私が賛成票を投じたのもそのためです。
同時に、考えるべきなのは、日本の地政学的な立場と国益です。日米同盟は重要ですが、ロシア、中国、北朝鮮という核保有国に囲まれた日本が、これらすべての国を敵に回すことは得策なのか。隣国が気に入らないからといって引っ越しはできないのですから、折り合いをつけていくしかないのです。
過去には日本漁船の拿捕、銃撃事件が多発していた
また、日本がアメリカやイギリスと違うのは、国益として解決すべき独自の課題が、ロシアとの間に存在することです。すなわち北方領土問題と平和条約の締結です。私のもとには、毎日のように元島民の人たちから「墓参はできるのでしょうか」「サケ・マス漁業交渉はどうなってしまうのでしょうか」という切実な電話がかかってきます。
日本とロシアの間には安心して操業するためのさまざまな取り決めがあります。本来ならば、毎年3月になると、日本とロシアの200海里の水域で行うサケ・マス漁の操業条件を決める交渉がありますし、4月以降には歯舞群島の貝殻島周辺の昆布漁の交渉もあります。
戦後、貝殻島水域は旧ソ連によって実行支配されましたが、貝殻島周辺は好漁場で、昆布採取を生業とする漁民は危険を冒してでも出漁しなければ生活が成り立たず、無理な操業を続けざるを得ませんでした。そのため、旧ソ連による日本漁船の拿捕が多発し、大日本水産会が努力して旧ソ連と交渉し、1963年に異例の民間協定が締結されたのです。