2014年に行った、米英仏とは違う日本独自の対応

日米同盟はもちろん大事ですが、今の日本はロシアへの制裁に躍起で、停戦が成立したり戦争が終わった後のことを考えているのか心配です。責任ある政治というのは、目先の出来事だけにとらわれず、常にその先を考えて、備えておかなければいけません。対話の窓口を閉ざさないことこそ、大切なのです。ロシアを一方的に敵国扱いして、日本に何が残るかといえば負の遺産だけだからです。

2014年にロシアのソチで開かれた冬季オリンピックの開会式に、アメリカのオバマ大統領、イギリスのキャメロン首相、フランスのオランド大統領は、出席しませんでした。その前年にロシアで成立した「同性愛宣伝禁止法」に抗議するためと言われています。日本の安倍総理は出席しました。それをプーチン大統領は非常に喜び、エネルギーや極東開発など「8項目の経済協力プラン」の合意に結びつきました。

外交とは積み重ねであり、約束を守る信義と道義が土台です。何よりも外交には相手があり、お互いの名誉と尊厳がかかっています。相手の立場を尊重しながら未来志向で進めていくしかありません。ロシアは日本にとって大事な隣国です。外交は常に、緊張の緩和に向けられるべきなのです。

政治の究極の目的とは

アメリカのバイデン大統領がロシアを挑発し続けたのは、大きな過ちです。お互い自制しなさいと言うべきだったと思います。「やっぱりロシアは悪い国でしょう」というアピールに終始しています。バイデン大統領は双方に話し合いを呼びかけるべきです。制裁よりも対話です。

そして日本も、岸田総理からロシア、ウクライナ、アメリカの大統領に強く話し合いを呼びかけるべきです。日本はウクライナへのODAに、3100億円も出しています。この戦争を長引かせることは、ロシアに対してもウクライナに対しても、日本の国益を損ねる結果になるわけです。岸田総理には、もっと積極的に強い外交に打って出ていただきたいと思います。日本はウクライナとも、アメリカとも、ロシアとも良い関係を築いております。

ゼレンスキー大統領は3月20日、CNNの単独インタビューに応じて「この戦争を止められる可能性が1%でもあるならば、この機会をとらえる必要がある。われわれにはその必要がある」と語ったそうです。ロシアとウクライナの双方に譲れない言い分がある以上、なおさら話し合いが重要です。両国の指導者には、これ以上の犠牲を出さないために、一刻も早く停戦協議をまとめてほしいと願います。

現実的な妥協点は、あるでしょうか。ロシアは、ゼレンスキー大統領の身の安全と立場を担保し、ウクライナへの非軍事化要求を取り下げること。ウクライナはミンスク合意を破棄したことを謝罪し、NATOへの加盟申請を取り下げて、中立化を約束すること。そうすれば、不戦協定へ導く道筋がつくのではないかと私は考えます。

政治の究極の目的は、世界平和の実現です。繰り返しますが、力による国家主権侵害はあってはならないし、先に手を出したロシアに非があるのは当然です。同時に制裁に終始するのではなく、一にも二にも対話によっての解決しかありません。これが私の意見です。

(構成=石井謙一郎)
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