日本はウクライナに侵攻したロシアに対して経済制裁を強めている。反発したロシアは対抗措置を表明。参議院議員の鈴木宗男氏はガルージン駐日ロシア大使に急いでアポイントを取り、翌日に会談したという。4月22日、危ぶまれていた日ロのサケ・マス漁業交渉は制裁下では異例の合意に至った。鈴木宗男氏がガルージン大使に伝えたこととは――。

ロシア外務省の声明を見て、私は急いでアポイントを取った

3月22日、ロシア総領事館のミハイル・ガルージン駐日大使と会談しました。前日の夜中に「日本政府の決定に対する対抗措置についてのロシア外務省の声明」が出されたため、急いでアポイントを取ったのです。

このロシア外務省の声明は、「日本による一方的な規制措置は明らかに非友好的で、現在の条件下では日本との平和条約に関する交渉を継続するつもりはない。1991年から続く南クリル諸島(北方領土を指す)の元島民らによるビザなし交流の事業を停止することを決定した。また、平和条約交渉の前進に向けた南クリル諸島における共同経済活動に関する日本との対話から離脱する」という内容でした。

この声明で「日本による明らかに非友好的な一方的な規制措置」というのは、ウクライナ侵攻以後に欧米と足並みを揃えて行った制裁のことです。

2月27日に、欧米諸国の要請に応じ、ロシアの一部銀行を国際銀行間の送金・決済システムであるSWIFTから排除する制裁に加わると岸田首相が表明。3月1日には、プーチン大統領など6人への個人資産とロシア中央銀行が日本国内に持つ資産の凍結を発表。3月16日には、ロシアに対して貿易上の優遇措置などを保障する最恵国待遇からの撤回も表明。

また、2月26日、3月1日、3月3日、3月8日に、外国為替及び外国貿易法による輸出禁止措置を導入することが閣議了解され、3月18日には半導体、半導体製造装置などの輸出規制が実施されました。

このような制裁を続けていけば、いずれブーメランとなって日本に返って来るだろうと恐れていましたが、その通りになってしまいました。北方領土問題の交渉については、岸田総理が国会答弁で「この状況では平和条約交渉できる環境ではない」と語っていますし、当面はどうにも進まないでしょう。

ガルージン大使に直接会って伝えたかった「思い」

しかし、1986年以降、人道的な観点から元島民の北方領土への墓参がビザなしで行われていましたが、これは絶対に止めてはいけません。

今年に入ってから、私は根室へ4回行きました。そのたびに北方領土の元島民の皆さんから、「去年と一昨年は2年連続で、コロナのために墓参ができませんでした。我々は平均年齢87歳です。人生、限られています。何とか墓参の道筋だけはつないでいただきたい」と、こういう訴えを聞いていました。

そこでガルージン大使に直接会って、元島民の思いをストレートにお伝えしようと考えたのです。ガルージン大使は「停止となるのは1991年以降の事業で、墓参は枠組みが違う。人道的な見地からも、墓参については制度として残っている。コロナのせいで2年間できなかったけれども、状況を見ながら、どこかのタイミングで判断したい」と答えてくれました。一縷の望みが繋がっているとわかり、ほっとしました。