プーチンがキレた本当の理由

アメリカやイギリスが主導する経済制裁に日本も加わり、3月1日にはプーチン大統領の個人制裁に踏み込みました。3月7日にロシアは日本を非友好国のリストに入れましたが、この個人制裁が決め手になったと思います。日本にはプーチン大統領の個人資産は何もありません。それなのに個人資産を凍結するということは、「お前とは付き合わない」という強烈なメッセージになるからです。「それなら結構だ」と相手が態度を硬化させるのは当然です。

そしてロシア外務省は3月21日、「日本による一方的な規制措置が明らかに非友好的である」として、北方領土問題を含む平和条約交渉を「現状において、継続するつもりはない」として中断する意向を表明しました。問題は、それで困るのは日本だということです。

国益に関わる問題がないのなら、アメリカやG7に同調するのもいいでしょう。しかし地政学的な条件が異なり、欧米にない国益にかかわる問題を抱えている日本には、相応の独自の判断があってしかるべきです。

アメリカと安全保障の枠組みに入っていても制裁をしていない国

だから日本は下手に出ろ、と言うのではありません。

たとえばインドの対応は参考になると思います。インドは安全保障の枠組みであるクアッド(QUAD:Quadrilateral Security Dialogue)でアメリカ、日本、オーストラリアと連携していますが、ロシアの機関や個人に制裁を加えていません。

たなびくインドの国旗
写真=iStock.com/da-kuk
※写真はイメージです

インドは隣国パキスタンや中国との間に国境問題や領土問題を抱えています。中国とは2020年に国境で軍事衝突が発生し、45年ぶりに双方で死者が出ました。パキスタンとは、カシミール地方をめぐり過去3度にわたり戦争が勃発、現在も緊張関係が続いています。インドが国家安全保障を考えてロシアとの対立を避けたのは賢明な判断でしょう。

私は間違っていることに対してはきちんと非難すべきだと思います。ただ、アメリカと安全保障の枠組みに入っていても制裁に加わらないインドのように、日本も独自の対応をしてもよかったのではないかと思うのです。