ノルマや会合の多い旧態依然としたPTA活動をスリム化することは可能なのか。2児の父である専修大学法学部教授の岡田憲治さんが東京都内の公立小学校でPTA会長を務めた3年間の苦闘の日々をお届けしよう――(1回目/全3回)。

※本稿は、岡田憲治『政治学者、PTA会長になる』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです。

PTAの3文字のスタンプが鎖につながれている
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問題意識はあるのに変えられない

最初に誤解がないように言っておくと、スリム化はまったく新しい話ではない。僕が関わり始めたPTAの前年度の活動目標は、「進めよう! スリム化!」だったのだ。つまり、今を生きる人たちは、「PTAのやり方はズレてきている」という問題意識は確実にもう持っていたのだ。ここはけっこう大事だ。持っているのにどうしてこうなるのかを考えるきっかけになるからだ。

僕に対して疑心暗鬼になりながらも、一緒に役員になったママたちは口では「会長の言うように、無駄が多いですよね。スリム化もっと必要ですよねぇ?」と賛同するのだ。いくら専業主婦モデルで活動していた人たちでも、さすがにこの時代にPTAをやるのに、20年前を想起させるような古い活動に「ありえないよね?」と思っている部分がある。だから、きっと一緒にスリム化ができるだろうと、それを聞いた時には淡い期待を持ってしまうのだ。

しかし個別の案件の検討となると、明らかにそこでの意見、議論、方向性に、抵抗し難い「うねり」みたいなものが頭をもたげてくるのだ。それは要するに、ほとんどの案件に結局「これまでやってきたことをなるべくいじらないという縛り」がかかるということだ。スリム化というアクセルを踏んでいるのに、同時にブレーキも踏んで、そこに摩擦を起こし、それが生む焦げ臭い匂いを作り出している典型的なシステムが「ポイント制」だった。

どうやって効率的にポイントをそろえるか

PTA活動への貢献度の「見える化」のためのやり方として、ポイント制は、全国の各学校単位のPTA(単位PTA)で採用されている。それは、多種多様な活動の大変さや重要度に応じてポイントを割り振り、6年間の活動の評価の標準として一定ポイントを目安にして、保護者たちの参加のインセンティブにするというものだ。うちのPTAでは、「12ポイント」が目安だ。保護者の多くは、このポイントをどうやって効率的にそろえるかで知恵を絞り、生活設計をする。