※本稿は、加谷珪一『国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
自殺による日本の若者の死亡率は独仏の2倍
日本は民主国家ですから、基本的にルールを守っていれば行動は自由なはずですが、日本人自身は自由であると感じていません。その理由は、社会あるいは世間の目というものがあり、それが自身の精神や行動を束縛しているからです。
世間の目が厳しく、ルールに従ってもバッシングされる可能性があるということになれば、極限まで追い込まれる人が出てきても不思議ではありません。
日本における10万人あたりの自殺者は18.5人となっており、英国(7.5人)、イタリア(6.6人)と比較するとかなり高い数値になっています(図表1)。ただ、フランス(13.8人)や米国(13.8人)もそれなりに高いですから、日本だけが突出して自殺が多いというわけではありません。
しかし、若者に目を転じてみると状況が変わってきます。
諸外国では15歳から34歳の世代における死因のトップは事故なのですが、何と日本では自殺がトップとなっています(図表2)。
自殺の原因の多くはメンタルヘルス
これは日本だけに見られる特殊な現象であり、若い世代が、少なくとも精神的な面において過酷な状況にあることが推察されます。精神的に劣悪な状況に置かれていることは、自殺の原因を見れば分かります。自殺の原因を見ると、全体としてもっとも多いのは健康問題なのですが、このうちの半分以上がうつなどの精神的なものとなっているのです。
より細かい原因が分かったケースでは、男性有職者の場合、10代では職場の人間関係、20代では仕事疲れ、30代ではうつ病が多くなっています。女性有職者の場合には10代、20代、30代ともうつ病がトップです。無職者の場合には、男女ともにうつ病がトップですが、これは仕事がうまくいかない結果としてうつになり、自殺に至った可能性が高いと思われます。
結局のところ、職場の人間関係など労働環境が極めて大きな影響を与えていることが分かります。
社会の自由度が低く、不寛容である場合、相対的に自由な行動を望む若者に大きなシワ寄せが行くことは容易に想像ができます。自殺の動向からも日本の特殊性が浮かび上がっているといってよいでしょう。