世論の批判を浴びても改善しないのはなぜか
平成25年、「いじめ防止対策推進法」が施行されました。これで、子どもたちの命や尊厳が守られると期待しましたが、残念ながら十分な効果をあげているとは言えません。
文部科学省が発表している「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」によると、令和2年度のいじめ認知件数は約52万件、1000人当たりの発生件数は約40件でした。
内容としては、悪口や仲間はずれが8割近くを占めており、けがを負わせるといった暴力や金品を奪うようないじめは、比率としてはそれほど多くありません。また、パソコンや携帯電話を使ったいじめが増えているのも最近の傾向です。
令和元年以降、コロナ禍で子ども同士が接触する機会が減ったために、いじめの認知件数は減少傾向にあるのですが、その一方で、いじめを原因とする長期欠席や不登校、そして自殺の増加には歯止めがかかっていません。令和2年の小中高生の自殺件数は、実に415件。調査開始以来、最悪の結果となってしまったのです。
なんとしても、子どもの命だけは救ってあげたい。こうした調査結果を目にすれば、誰もがそう思うことでしょう。
いじめに遭っていた子どもが自殺する事件が発生すると指摘されるのが、学校・教育委員会のいじめ問題に対する消極的な姿勢です。たしかに、マスコミ報道を見る限り、いじめの存在自体を認めたがらず、仮に認めたとしても法律にのっとった的確な対応をしない学校・教育委員会が多いように感じます。全員とは言わないのですが、多くの教育評論家やいじめの専門家は、「学校・教育委員会がダメだからいじめはなくならないんだ」と批判し、世論も巻き込んだ大バッシングになります。
しかし、こうした報道が繰り返されても、事態は一向に改善されません。法律も整備されて、いじめ相談の窓口もたくさんあるのに、改善しないのはなぜなのか。原因を探るべく、学校・教育委員会にアンケートを取ってみようと考えました。