調査費用は誰が出すのか
第二は、財源の問題です。
いじめ防止対策推進法は、重大事態の発生が疑われると学校・教育委員会が判断した場合には、「(学校・教育委員会は)事実関係を明確にするための調査を実施する」と規定しています。
調査委員会の設置した場合、各委員への報酬が発生します。そして、その費用捻出に苦慮する自治体も多くあります。実際、アンケート調査の回答でも、「調査委員会の設置は費用面で困難が多い」という答えが多数ありました。
学校・教育委員会が調査委員会を設置する際は、職能団体に推薦依頼をすることになりますが、推薦依頼の対象となるのは医師会や弁護士会、心理士会といった、いわゆる各分野の専門家です。地方に行けば、専門家への依頼の費用が安くなるかといえばそんなことはなく、ほぼ全国一律です。大都市圏はいざ知らず、地方の小さな自治体が高額な費用を払って専門家の方に調査委員を依頼することは、「財政的に」困難なのです。
だからといって、予算内で引き受けてくれる学校・教育委員会と付き合いのある専門家だと、すぐさま「事実を隠蔽するために、利害関係者に依頼した」などと批判されてしまいます。学校・教育委員会がいじめ問題の解決に消極的になってしまう原因のひとつには、財政の問題もあったわけです。
いじめ問題の解決を図るには、その土台である学校・教育委員会の体制を整えることが不可欠です。そのために何が必要かといえば、人員と時間と財源。教育委員会や学校の現場が抱える問題を改善し、体制を整えなければ、子どもたちは守られないと私は考えているのです。
(構成=山田清機)