いじめ被害生徒の保護者として相談を受ける
新聞やテレビでいじめのニュースが流れるたびに、学校・教育委員会がいじめの存在をなかなか認めようとせず、いじめの解決に消極的であることが報じられます。そうした学校・教育委員会の対応に、いじめ被害に遭った児童・生徒の保護者が怒りをあらわにし、教育評論家などが学校・教育委員会の姿勢を激しく批判する様子は、もはや見慣れた光景となってしまったと言ってもいいでしょう。
なぜ、いじめ問題はこじれ、膠着し、解決に長い時間を要することになってしまうのでしょうか? それを論じる前に、私がなぜいじめ問題と関わるようになったのか、その経緯からお話ししていきたいと思います。
私は、いじめ被害生徒の保護者です。
息子は中学生の時、警察が介入するほどの激烈な暴力を受けて登校することができなくなってしまい、ついには自傷行為に及ぶほど心に傷を負ってしまいました。息子の心がみるみる壊れていくのを目の前にして、学校・教育委員会に対する私の不信感はピークに達し、息子を守るため、徹底的に戦う決意を固めたのでした。
こうした私の姿が何度も報道されたこともあって、同じようにいじめ問題に直面している児童・生徒や保護者の方たちから、相談が舞い込むようになりました。学校・教育委員会との「戦い方」を教えてほしいというわけです。
相談件数は、猛烈な勢いで増えていきました。これは、きちんとした組織をつくって対応しなくてはならないだろうと考えて、まず2020年に市民団体を立ち上げ、翌2021年、この市民団体をベースにした、子どもたちの命と尊厳を守るNPO法人「Protect Children~えいえん乃えがお~」を立ち上げたのです。
相談の内容は、いじめ、教員による不適切指導、虐待、学校・教育委員会等への対応問題など多岐にわたりますが、1カ月に200件近い相談が寄せられます。相談者は当然、被害児童・生徒本人、保護者が多いのですが、実を言うと、学校・教育委員会からの相談も3割近くあります。これはおそらく、他の団体にはない特色ではないかと思います。
そして、大げさではなく、私が介入すると1日か2日で解決に向けて事態が動き出します。これまで携わった案件で、膠着状態に陥って動かなかったものはないと断言できます。