いじめ加害者にはどう対応すればいいのか。NPO法人「プロテクトチルドレン」代表の森田志歩さんは「いじめ加害者に対する厳罰化が議論されているが、子どもたちはそんなことは望んでいない。大切なのは反省を促すための教育をしっかりやることだ」という――(後編/全2回)。
NPO法人「プロテクトチルドレン」代表の森田志歩さん
撮影=堀 隆弘
NPO法人「プロテクトチルドレン」代表の森田志歩さん

いじめ加害者への厳罰化を子どもは望んでいない

前編に続きプロテクトチルドレンで行った「いじめに対する全国児童対象アンケート」の中から、「子どもと大人の意識がいかにズレているか」を思い知らせてくれる回答をいくつかご紹介したいと思います。いじめ問題は、往々にして大人対大人のけんかに発展してしまい、当事者である子どもの気持ちや本音は置き去りにされてしまいがちですが、そんな実態が、アンケート結果からもはっきりと読み取れると思います。

この質問に対して、もしも読者がいじめ被害を受けた子どもの親だったら、いったいどのように答えるでしょうか? おそらく「厳罰を与えてほしい」とか「うちの子から遠ざけてほしい」などと答えるのではないでしょうか。

Q いじめをした生徒には、どうしてほしいですか?

実際、一部の教育評論家やいじめ問題の専門家と称する人々の中には、「加害生徒に厳罰を与えろ」とか「教室から追放すべきだ」などと声を上げている人もおり、そうした意見に同調する親もたくさん存在します。こうした声を受けて、自民党の文部科学部会ではいじめ加害者を学校の敷地内に入れない懲戒処分制度の創設を提案しています。

しかし、アンケート結果をご覧いただけばわかる通り、実に70%近い子どもたちが「反省して謝って欲しい」と答えているだけで、教室からの追放といった「厳罰」を望んでいるのは極めて少数に過ぎないのです。それどころか、自由回答の中には「(加害生徒を)教室の中に入れないのもいじめだと思う」といったコメントも多くありました。

いまの子どもたちは学校で、「悪いことをしたら、いじめられても仕方ない」という教育を受けていません。そして、この考え方を加害生徒にも、公平に適応しているのです。だから、「いじめをした子だから、教室から追放してもいい」とはならないわけです。

現代の子どもたちが、加害生徒に厳罰を望む親とはまったく違う感覚を持っていることが、回答からはっきりと浮かび上がってくる結果となりました。