「ポイントがついているから」古紙回収を廃止にできない

しかし、このポイント制度がスリム化のブレーキになるのは、言うまでもない。なぜならば、「この活動は、今や私たちの時代の生活の現実にマッチしていないものだから、来年の活動リストからはカットしましょう」と言うと、必ず心がどんよりとするような反論が出てくるからだ。

「会長! それスリム化無理ですよ!」

「どうして? 古紙回収なんて、回収ステーションの手配と登録にものすごく時間がかかって、庶務さんが本当に気の毒なぐらいハードな労働になっちゃってるし、でも実際にはみんな新聞購読しなくなっちゃってるから、月一の回収日に集まった古紙なんてわずかじゃないですか? もう歴史的役割を終えたでしょ? 真っ先に止めるべき活動でしょ?」

「それはわかります。それは岡田さんの言う通りなんです。でもダメです」

束ねられた古新聞
写真=iStock.com/Xanya69
※写真はイメージです

なぜ……?

「ママたちの中には、月一、ステーションに新聞置くだけで負担少ないから、それを毎月やって、毎年やって6年生まで続ければ、それだけで6ポイントだからって、計算して、もう組み込んで、決めちゃってる人がけっこういるんですよ。だから、今更、“古紙回収のポイント無くなりました”なんて言えないですよ。ポイントついてるんですから」

ポイントがある以上、止められない……?

なんだそりゃ?

それを言葉の真の意味における本末転倒って言うんじゃないのか?

回収できる古紙が減ったためにわざわざ新聞を購読

「あのぉ、会長、ちょっといいですか?」

呆然とする僕の姿に戸惑ったのか、目をパチクリしている僕に「ここは何が何でも説得しないと古紙回収が廃止になっちゃう」という焦りを感じたのか、別の役員さんが尋ねてきた。

「会長の言うように、古紙がもう減っちゃってステーションが寂しいっていうのは、ほんとそうなんですよ。だから、ママたちの間では、あんまり新聞が少しで申し訳ないのに、主人が会社に日経新聞持って行っちゃうから、あたしが朝日新聞とろうかって、思い詰めちゃってる人もいるみたいなんです……」

虚構新聞ではない。見出しをつけるなら、こうだ。

「古紙回収廃止の危機に“朝日を購読!”の真摯しんしな提案上がる」

スリム化ですよと言いながら、あなた方はいったい何をカットし、何を守ろうとしているのか? ポイントがあるから、それあてにしている人たちもいるから無理です? 何? その人たちの「ポイントゲットの効率性」を守るの? それとも、何を守るの? 朝日新聞を守るの?

だめだ。諸悪の根源だ。

澱んだ無駄の溜池だ。

間違いのルーツだ。

ポイント制度!

この時の驚きと「何か人々が一番大事な筋を外していること」に対する不信は非常に強かった。福澤諭吉じゃないが、「ポイント制度は親の仇でござる」だったのだ。