料理上手で、2人の娘の育児にも協力的な国家公務員。30代の妻はそんな同い年の夫が自慢だった。しかし結婚して7年、夫が思いもよらぬ病気が発覚。悪性度が最も高い脳腫瘍。医師の診察は「手術しても100%再発し、余命は14カ月」。開頭手術を受ける際、「よかったじゃん(死ねば)住宅ローンが0円になるね」と夫は笑ってみせた――。
皿洗い
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この連載では、「ダブルケア」の事例を紹介していく。「ダブルケア」とは、子育てと介護が同時期に発生する状態をいう。子育てはその両親、介護はその親族が行うのが一般的だが、両方の負担がたった1人に集中していることが少なくない。そのたった1人の生活は、肉体的にも精神的にも過酷だ。しかもそれは、誰にでも起こり得ることである。取材事例を通じて、ダブルケアに備える方法や、乗り越えるヒントを探っていきたい。

子煩悩で料理上手なイクメン夫の浮気・うつ病を疑う

中部地方在住の白井和美さん(仮名・30代・既婚)は、看護系の大学時代、同級生の友人から、同い年で国家公務員だという男性を紹介される。それが現在の夫だ。

2人は8年間付き合い、2007年に結婚。翌年3月、大学病院の看護師をしていた白井さんは退職して家庭に入り、実家から高速道路をつかって1時間ほどの夫の実家から車で15分ほどのところに新居を建築。2年後に長女、その3年後に次女を出産した。

白井さんの夫は、料理も掃除も洗濯も、何でも率先してやってくれる人だった。娘が生まれた後は、おむつ替えはもちろん、着替えや爪切り、入浴や食事の世話など、自分からどんどんやってくれるイクメン。白井さんが夜泣き対応で朝がつらいときには、白井さんのために朝食を作ってから仕事へ行ってくれた。

「夫は本当にいい旦那さん、いいパパでした。料理もプロ級の腕前で、煮物、揚げ物、中華、イタリアン、何でも作れちゃいます。たぶん、こんなに何でもやってくれる人はなかなかいないんじゃないかな……と思っていました」

夫は娘2人を溺愛し、言葉が話せるようになった長女が「パパ買って~」とねだると、自分の小遣いをはたいて何でも買ってあげていた。

ところが、そんな幸せな生活が一変する。

2014年5月。夜勤から帰ってきた夫を白井さんが玄関で迎え、いつも通りに「おかえり~!」と言ってキスをしようとしたところ、「いや、そういうのいいや……」と夫は冷たく拒否。そのまま夫はソファーに横になり、またたく間に寝入ってしまった。

「夫は、行ってらっしゃいとおかえりなさいのキスは欠かさなかったし、いつも夜勤明けは、帰ってくるなり趣味のサーフィンに出かけていたのですが、その日から急にサーフィンにも行かなくなり、別人になったかのようでした」

ソファーで横になっている夫に白井さんが話しかけても、無視するか面倒くさそうに「うん」と言うだけ。翌朝、夫は仕事の時間になると起き、無言で仕事に行った。

白井さんは浮気かうつ病を疑い始めた。