関西在住の花田陽菜さん(仮名・54歳・既婚)は短大を卒業後に就職し、23歳の時に結婚。2人の娘を出産した。夫の父親が経営する工場の上に建てた二世帯住宅に住み、夫は父親の会社を継いだ。だが、幸せな時間はそれほど長くは続かない。まず花田さんの父親が肝臓がんで他界。その後、義父も心筋梗塞を起こし、実母が心臓の病気(僧帽弁閉鎖不全症)を発症していることが発覚。さらに義母に胃がんが見つかり、摘出手術を受けたが、義父母ともに認知症が進行するなど次々に病魔が襲う――。
自動車整備工場の廃業と自己中な義姉
2018年1月、関西在住の花田陽菜さん(仮名・現在54歳・既婚)の夫は、義父から自動車整備工場の経営を引き継いだものの、赤字続き、廃業を決断。花田さんは3月からパートに出て、夫は4月から路線バスの運転手として働き始めることになった。
7月、梅雨の長雨がきっかけで、約30年前、結婚直後に整備工場の上に建てた義両親との二世帯住宅に雨漏りがするようになっていた。
花田さん夫婦が業者に相談すると、「屋根の躯体(構造体)が朽ちており、大掛かりな工事が必要になるため、修理すると400万円ほどかかります」と言われる。
花田さん夫婦は、「それならこれを機に賃貸併用住宅に建て替えて、家賃収入を得よう」と考え、義両親に提案。すると2人は賛同し、認知症で要介護2とはいえ当時はまだ会話ができる状態だった義父は、「別の場所にある土地を売却して、その頭金にするといい」と言ってくれた。
しかし、こうした取り組みの障壁となる存在があった。義姉だ。本人は2015年に離婚後、花田さんと義親の二世帯住宅の2軒隣に引っ越してきていた。夫が義姉に賃貸住宅への建て替え案を報告すると、「両親がいいなら」と認めた。ところがその数日後、義母が義姉の家に行き、「借金は嫌だ」と言った影響で「お母さんが反対なら反対」と前言を撤回した。
義父と同じように認知症の義母は、自分がどこで何を言ったかなど覚えていないが、義姉はそれを知らない。両親を連れて銀行を回り、過去10年間の両親の口座のお金の流れを調べ、両親の定期預金を解約。1000万円を引き出し、「自分が預かる」と言って譲らず、花田さん夫婦は困惑してしまった。
花田さんは今、この時のことをこう振り返る。
「義姉は私たち夫婦に対して、『かわいそうだから、両親はこのまま(老朽化した)家にいさせてやりたい』『両親に何かあった時、すぐ使えるお金を手元に置いておきたい』そして、『これで、賃貸併用住宅なんて建てられないでしょう? 建てられるものなら建ててみなさい!』と、捨てぜりふを吐きました」