義父の誤嚥性肺炎と延命処置

2020年2月、義父の食が極端に細くなった。心配になった花田さんは栄養補給に工夫をしたが、義父の食欲は一向に戻らず、訪問診療で点滴を受けることに。

そして3月、義両親がデイサービスに行っていると、職員から「お義父さんに微熱があるため、病院を受診します」との連絡が入り、花田さんは義母と共に病院へ向かう。レントゲンを撮ったところ、義父は誤嚥性肺炎を起こしており、入院が決まる。

やがて入院先の病院からは、今後の義父の延命処置について相談があった。

「病院からは、①高カロリーの点滴で看取りまで、②経鼻栄養で施設を転々、③胃ろうで施設を転々、の3択を迫られました。私と夫は、①の高カロリーの点滴で看取りまで、を選択しましたが、義姉は、『②の経鼻栄養で、少しでも人間的な処置を』言いました」

意見が分かれたため、医師になっていた姪に相談すると、

「永久的な経鼻栄養を『人間的な措置』と捉えるのには違和感があります。鼻のチューブは基本不快です。あと、チューブが入っていること自体が誤嚥性肺炎を誘発します。なので私は①か③と思ってます」

と回答。すると義姉は、「それなら③の胃ろうを作って、少しでも長生きしてほしい、義母の生きる希望になる」と言った。

治療を受ける患者
写真=iStock.com/fotocelia
※写真はイメージです

その発言を受けて姪は次のようなメッセージをグループLINEで送ってきた。

「苦痛と思っているかどうかは本人でないとわかりませんが、鼻からチューブはたぶん気持ち悪いし、胃ろうを作るとき痛いので、それをどう判断するかです。あとは今後、『いよいよ厳しい』と何をもって判断するか。(病院はすでに、『いよいよ厳しい』と判断しているからこそ、この話をしてきていると思う)。それと、転院したらお祖母ちゃんが毎日お見舞いに行くのは難しくなるかもしれない。以上についてどう考えていますか?」

これに対し、義姉からの返事はなかったが、しばらくして義姉からLINEが入った。

「医師の話からは『いよいよ厳しい』という緊迫感は伝わりませんでした。なので、いろいろと考えたのですが、医者であるあなたがそう言うのなら、もう差し迫った時期なんでしょうね。それなら②も③もないと思います」

すると姪は、長文のメッセージをくれた。

「一番苦痛のない方法は、①です。たぶん大半の医師は①を選ぶと思う。けど何か明確な目標があっての延命(例えば、特定の日までは何としてもどんな形でも生きていてほしい、とか。)なら、半端に②ではなく、③だと思って、①か③と言いました。でも、そうではないようなので、①が良いと思います。ちなみに、『いよいよ厳しい』といっても、日単位でどうこうというわけではなく、ただ、治療やリハビリをしても、もうこれ以上回復の見込みはないという意味です。今は幸い、肺炎自体は落ち着いていて、お祖父ちゃんは苦しむことなく過ごせています。現時点で一番危惧すべきは、誤嚥性肺炎の再燃であって、再燃すると次こそ命取りになり得るし、何より本人がしんどい思いをします。その状態をお祖母ちゃんに見せるのもかわいそうです。そう考えると、極力誤嚥のリスクの低い治療法を選択するのが、祖父母も含めた皆にとって一番いい形なのではないでしょうか」

やがて緊急事態宣言が発令されると、義父との面会はできなくなった。