夫のがんと母親の心不全、そして義父の死

2020年8月、夫が会社の人間ドックを受けたところ、「腎臓に嚢腫と影があるので、大きな病院で再検査をするように」と言われる。紹介状を書いてもらい、すぐに総合病院を受診し、CTを撮ったところ、腎臓がんと診断された。

幸いまだ11mmほどの大きさで、医師からは「急がなくても大丈夫」と言われたが、不安でたまらなかった花田さんは、「いや、急いでください!」と頼み込み、最短である11月に手術を決めた。

11月、夫の手術は無事終わり、その後、半年ごとに経過観察受診することに。

その同じ月、かねて「息苦しい」と訴えていた母親は、かかりつけ医の診察日に相談すると、そのまま検査入院に。念入りに検査したところ、心不全を起こしていたことがわかり、7日後に退院できたものの、ひどいせん妄症状が出始める。

母親にせん妄症状が出るとき、ろれつが回っていない気がした花田さんは、脳神経外科でMRIを撮ってもらったが、脳梗塞ではなかった。脳神経外科の医師に、「認知症でせん妄が出ますか?」と花田さんが訊ねると、「せん妄のある人が全部認知症というわけではありません」と言われた。

「突然母は、高知にいる母の従弟の家にいると思い込んでいて、『家賃を払わないといけない!』と言い始めたり、タンスの向こうに舞台があって、そこで私の長女の『舞台を観るのか?』と訊ねてきたり、壁や天井に蛇がいる、猫がいる、犬がいると言って騒いだり、ひどいときには、家の中に数人の男性がいて、私がその男性たちの性欲処理をしていると思い込んでいて、『恥ずかしい娘!』とののしられたりするようになりました」

フォーク状の舌を出している、猛毒をもつ蛇
写真=iStock.com/Byronsdad
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2021年1月7日、義父が入院している病院から、「消耗品を持ってきてください」という連絡があり、コロナ禍で面会ができないため、花田さんが義父の様子を訊ねると、「お変わりありません」と回答。

しかし翌8日、「血圧と意識レベルが下がっています」との連絡を受け、特別に面会が許されることに。すぐに義母を連れて面会に行くと、「いつ急変するかわからないので、24時間連絡が付くようにしておいてください」と言われる。

さらに9日、今度は「心拍が弱まっています」との連絡があり、花田さんは夫に連絡。連絡を受けた夫は義母とともに面会に行き、いったん落ち着いたとのことで帰宅。ほっとしたのもつかの間、「すぐに来てください!」と再度連絡があり、夫と義母が病院へ駆けつけると、そのまま義父を看取った。91歳だった。