組織における忠誠心と怨恨の問題は、われわれ人間にとっては、永遠の悩みどころなのかもしれない。

『戦国策』にこんな話がある。中山という国の君主が、都の貴族たちを招いて饗宴をひらいた。その席に司馬子期という人物も出席していたが、たまたま羊のスープが足りなくなり、彼のところまで回ってこなかった。

これに怒った司馬子期、なんと隣国の楚に逃亡して楚王をけしかけ、中山を攻撃させたのだ。中山の君主は、やむを得ず国外に逃げようとする。すると、二人の人間が、ホコを手にして彼につき従った。
中山の君主は振り返って、二人に尋ねた。

「きみたちは何者かね」

二人はこう答えた。

「われわれには父がおりまして、かつて飢え死にしそうになったことがあります。そのとき、君主が一壺の食料を恵んでくださったので、餓死を免れました。父は亡くなるときに、こう言い残したのです。『もし中山国にことがあれば、お前ら必ず命を投げ出せ』

だから、われわれはここに来て、国のために命を投げ出そうとしているのです」

中山の君主は、思わず嘆息して、こう述べた。

「恩恵を施すのであれば、量の多い少ないは関係がない(与うるは衆少を期せず)。問題は、相手が困っているタイミングに、みを買うか否かは本人自身の与かり知らぬ面があるという点だ。

そもそも、怨みの原因となった饗宴でのスープの差配は、宴会を担当する番頭役の仕事であり、また責任だ。しかしそこで問題が生じると、組織のリーダーが糾弾を受け、怨みの標的にされてしまう。

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