戦乱の時代といえば、つきものになるのが「謀略」の数々だ。

優勝劣敗のシビアな状況では、古今東西「卑怯といわれようと、やったもの勝ち」「勝てば官軍」という考え方がどうしても跋扈し始める。

では、「謀略」というのは、どうすれば成功させられるのだろう。また逆に、自分の方は引っかからないで済ませられるのだろうか。『戦国策』には、こんな故事がある。

魏王が楚の懐王に美人を送った。すると懐王は、その女にぞっこんとなった。

愛妾の鄭袖(ていしゅう)は、王の新入りへの寵愛を知ると、その女をたいそう可愛がった。衣服、寝具、室内の調度、身の回りの品々など、女の好みにあわせて作ってやった。その寵愛ぶりは、王を凌ぐほどだった。

王はそれを知ってこう言った。

「女性は色香をもって夫に仕えるもの。嫉妬心を持つのは当たり前だ。ところが鄭袖は、わしが新しい女に夢中になると、わしよりも可愛がってくれる。孝行息子が親に仕え、忠臣が君主に仕えるようではないか」

鄭袖は、自分は嫉妬していないと王に信じ込ませたと知るや、新入りの女にこう告げた。

「王はあなたの美しさにぞっこんです。しかし、あなたの鼻だけはお気に召さないようです。これから王の前に出るときは、必ずあなたの鼻を手で隠すようにしなさい」

新入りの女は、王の前に出ると鼻を手で隠した。

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