「菅首相と首脳会談を行いたい」と言っていたが…
7月23日に開催される東京オリンピックにともない、各国の首脳や閣僚らが来日し、いわゆる「五輪外交」が展開される。このうち韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領も来日予定だった。その狙いは菅義偉首相との日韓首脳会談だ。
ところが、韓国大統領府の青瓦台(チョンワデ)は7月19日、「訪日を見送る」と発表した。文在寅氏は「菅首相と初の対面による首脳会談を行いたい」との意向を示し、青瓦台が「短時間の面談ではなく、成果の見込める本格的な会談なら訪日を検討できる」と日本政府に対応を求めていた。日本政府も準備を整え、会談は実現する見通しだった。
今回の直前のキャンセルには、文在寅氏の「会談が物別れで終わり、目立った成果がなかった場合、世論の反発を招く恐れがある」との計算があったようだ。
沙鴎一歩は見送りで良かったと思う。東京五輪が終わった後、今度は日本側のペースで調整を進め、慰安婦と徴用工の問題についての本格的協議に入るべきである。
「成果の見込める会談なら訪日を検討できる」
文在寅大統領は残りの任期が1年を切るなか、日韓首脳会談を実現しようと懸命だ。来年3月の大統領選を前に冷え込んだ日韓関係を改善することで与党に貢献し、政治家としての自身の名誉を挽回したいと考えているからだ。
韓国大統領の任期は5年で再選はできない。文在寅氏は2022年5月で任期が満了する。すでに任期最後の1年に入っている。
韓国側の「成果の見込める会談なら訪日を検討できる」という言い方は、日本を馬鹿にしている。「韓国として成果が得られるようならオリンピックをきっかけに首脳会談に臨んであげてもいい」という意味に受け取れる。開いた口が塞がらない。日韓関係を「戦後最悪」という状態に陥らせたのは文在寅氏であり、日韓関係を改善する責任は韓国政府にある。この観点からも「訪日見送り」でよかった。
ちなみに、6月中旬のイギリスでのG7サミットでは、菅首相と文在寅氏はあいさつを交わしただけで、正式な会談は行わなかった。日本が日韓首脳会談に対して慎重な姿勢を示したからで、この日本の対応は評価できる。