「痛風」は恐ろしい病気だ。ある日突然、発作に襲われ、足の親指の痛みで身動きが取れなくなる。1週間程度で痛みは治まっても、放置すれば発作を繰り返し、腎障害などを引き起こす。痛風専門医の大山博司さんは「『ビールではなく焼酎なら大丈夫』などと間違った情報を信じている人が多い」と警鐘を鳴らす――。
※本稿は、大山博司『これ一冊で痛風のすべてがわかる!専門医が教える痛風の「ウソ」と「ホント」』(22世紀アート)の一部を再編集したものです。
尿酸の結晶が降り積もり、ある日発作が
まずは痛風という病気がどんな病気なのか、基本的なことから述べてみたいと思います。高尿酸血症(血液中の尿酸値が7.0mg/dL以上の状態)が数年間続くことにより、関節内にたまった尿酸塩結晶の一部が剥離し、急性関節炎を起こした状態を指します。
高尿酸血症の人がすべて痛風の発作を起こすわけではありません。わが国の痛風患者の数は約100万人いますが、高尿酸血症の人はなんとその10倍、1000万人にも上るといわれています。潜在的に痛風発作を起こす可能性のある人がそれだけいるわけです。高尿酸血症の患者さんのほぼ95%は男性で、従来は50代、60代の男性が圧倒的に多かったのですが、近年は40代から30代へとピークが変わりつつあります。20代も増えており、いまや若い世代の病気だといっていいでしょう。
わたしのところへ来られる患者さんによくあるケースをお話しましょう。たいがいは中年の男性です。夏の暑い時期、仲間と汗をふきふき大好きなゴルフに精を出した。ラウンドしたあとでサウナに入り、汗を流してさっぱりしたところでビールをジョッキで何杯も飲んだ。その夜はぐっすり眠れたのだけれど、翌朝、目が覚めると足の親指が腫れ上がって激痛が走った──。
これは典型的な痛風発症のパターンです。足の親指の関節に尿酸の結晶がかなりできていたところに激しい運動、過度の飲酒という刺激が加わって、痛風発作が起こったのだといえるでしょう。患部に直接、振動や外傷など物理的な力が加わっても、この痛風発作は起きることがあります。