感染拡大防止に本当に必要なら、撤回の必要はない
酒の提供を続ける飲食店への対応で、政府内の混乱が収まらない。発端は、7月8日、内閣官房と国税庁が連名で出した通知だ。
そこでは酒の販売業者に酒の提供停止に応じない飲食店と取引しないように要請。さらに要請を主導する西村康稔・経済再生担当相は、酒の提供を止めさせるため、飲食店に融資する金融機関にも働きかける考えを示していた。
これが世論の大反発を招き、早くも13日には廃止された。7月14日の衆院内閣委員会の閉会中審査で、西村担当相は次のように釈明した。
「強制的な実施を求めるものではなく、可能な範囲で感染拡大防止に協力をお願いする趣旨だったが、混乱を生じさせてしまった」
「事業者の皆さまにはさまざま不安を与えてしまい、誠に申し訳なかった」
「感染を何としても抑えていくために(辞任ではなく)、職務に全力を挙げることで責任を果たしたい」
いったい何を考えているのだろうか。酒を提供する飲食店にとって、通知の内容は死活問題だ。感染拡大防止に本当に必要だと考えているなら、引っ込めるべきではない。飲食店の死活をわける決断を、気軽に出したり引っ込めたりされては、たまったものではない。
「金融機関にも働きかける」という勢いは、なぜ消えたのか
要請について説明する8日の記者会見で西村氏は、こう話していた。
「協力していただけない店には、特別措置法の命令、罰則を何度でもやる。金融機関からも応じていただけるよう働きかけてもらう」
この勢いはどこにいってしまったのか。前述した14日の答弁ではこう陳謝した。
「融資の制限などを求めるものではないので、優越的地位の乱用には該当しないと考えたが、誤りだった。飲食店や酒類販売業者の気持ちに寄り添い、配慮しながら社会全体で感染を抑えていく環境作りに全力を挙げていきたい」
「考えた」というフレーズが引っ掛かる。まさか西村担当相がひとりで考えたということはないだろう。組織的に検討し、実行可能だと考えて要請を出したが、あわてて引っ込めたということではないのか。