新型コロナの感染リスクについて、誤解されていることがある。国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長の西村秀一さんは「屋外でもエスカレーターと階段はリスクが高い。特に荒い呼吸の状態で感染すると重症化しやすくなるので、マスクをして、ゆっくり利用したほうがいい」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、西村秀一『もうだまされない 新型コロナの大誤解』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

新型コロナのコンセプト画像。人々の周りに漂うウイルス
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人が少ない屋外であればマスクは必要ない

外を歩くだけなら、マスクは必要ありません。熱中症の危険性がある時期はなおさらです。

屋外の広い場所では、すれ違った相手がたとえ咳をしたとしても、ウイルスを吸い込む可能性がとても低いです。別のよくある場合も見てみましょう。

図表1のイラストを見てください。普通は戸外は程度の差こそあれ、必ず風がありますが、話がちょっと複雑になるので、ここでははじめに無風の仮想空間で説明します。その無風状態の道や、屋内でも体育館のような広い場所を、2人の人が歩いているとします。

オープンスペースでのリスクの考え方
オープンスペースでのリスクの考え方 出所=『もうだまされない 新型コロナの大誤解

このうちBさんが感染しています。Bさんがマスクをせずに1回咳をすると、口から出る飛沫粒子の中にウイルスがいます。ウイルスの中には、何個か生きているウイルスがいます。何度も咳をすれば、Bさんと並んで歩くこれまたマスクをしていないAさんは、当然ウイルスを吸い込む可能性があります。

2人が歩いていき、Bさんが咳をした場所をCさんが通りかかります。Cさんは空中を漂うエアロゾルの雲の中へ入っていきますが、その時には生きたウイルスは先ほどよりも「空気のブラウン運動」(中学の理科で習う)で拡散しているので、ほんの短い時間の通過の際に、それを吸い込む確率は極端に低くなります。

その後Dさんも、Bさんが咳をした別の場所を通りかかりますが、Cさんと同様、というより拡散がさらに進んでいて、Cさん以上に生きたウイルスを吸い込む確率はほとんどありません。

このように、風がなくてもエアロゾルは時間とともにだんだん拡散し、通りがかりに吸い込む確率は低くなります。