本当の理由は「自分の子だけ損をさせたくない」

しかし、私はこれらの3つの理由は後付けであると考える。今の親たちが中学受験をさせたがる本当の理由は、「自分の子だけ置いてきぼりにされたくない」からだ。今の時代は、良くも悪くも情報で溢れている。中学受験のサイトを見れば、首都圏では中学受験をするのは当たり前で、しないという選択をする余地はない。そんな情報を目にして、もし「しない」という選択をしたら、この子の将来はどうなってしまうのだろうと不安が募る。「しない」ことによって、この子が将来損するかもしれない。そうなったら、かわいそうだ。「損をさせたくないから受験をさせる」というのが、今の時代の中学受験だと感じる。

「うちの子はちょっとやんちゃだから、内申点で苦労しそう」
「いまだ揺れ動いている大学入試。この子のときにどうなっているか分からないし、無駄に苦労させたくない」

かわいいわが子に、つらい思いや失敗をさせたくないと思う親の気持ちは分からなくもない。でも、そうやって親が障害物をどかして、安全な道へと進ませて本当にいいのだろうか。

進路
写真=iStock.com/Olivier Le Moal
※写真はイメージです

私は、中学受験は「損をしない」ためにあるのではないと思っている。そういう理由で中学受験をさせると、親は必ず偏差値にこだわるようになる。人より偏差値の高い学校へ入れることが、人生の幸せを手に入れられる切符だと信じて。そして、そこに合格できないと、「受験に失敗=この子の人生は失敗してしまった」と思い込む。こうなってしまうと、中学受験は本当につらいものになる。

中学受験の意義は子どもを自立・自律に導くこと

中学受験をさせるのであれば、親はまわりの情報に振り回されず、覚悟を持って、わが子を支えるべきだ。そして、結果ではなく、プロセスに目を向ける努力をするべきだ。

子育ての最終ゴールは子どもを自立・自律させることだ。受験である以上、合否は必ず出る。だが、中学受験をする上で大事なのは、結果ではなく、そこまで頑張った過程だ。

受験を通じて何を学ぶことができたか。まず、いろいろな知識を得ることができただろう。また、受験勉強を通じて、努力をすれば成果が出ることも経験しただろう。その上で、自分よりも上の子がいることも知っただろう。こうしたさまざまな経験こそが、子どもを成長させ、自立させていく。それを育むのに、中学受験は最高のツールだと、私は感じている。

ただし、それには親の関わりが重要になる。結果ばかりに目が行くと、子どもの成長に気づきにくい。大事なのは、日々の小さな成長に気づいてあげることだ。そして、それを言葉で伝えてあげてほしい。そうすれば、子どもの気持ちが前向きになり、自分から勉強を楽しめるようになるだろう。中学受験をさせる意義はそこにあると、私は信じている。

(構成=石渡真由美)
【関連記事】
子どもに月経や射精について話すときに「絶対使ってはいけない言葉」2つ
「お金が貯まらない人の玄関先でよく見かける」1億円貯まる人は絶対に置かない"あるもの"
会議で重箱の隅つつく「めんどくさい人」を一発で黙らせる天才的な質問
東大卒の異才・山口真由が考える「国算理社」で一番重要な科目
中学受験の最新事情「30年前の開成レベルの問題が偏差値40の学校で出る」