「高校受験の内申書」が親たちを不安にする
2つ目は「高校受験に対する不安」だ。高校受験を回避したがる親が気にするのは、調査書(いわゆる内申書)の存在だ。調査書とは、生徒一人ひとりの成績や学校生活について、各都道府県や教育委員会が定めた評価基準で評価するもので、高校受験では合否判定の資料の一つとして使われる。
調査書の存在は高校受験では大きくのしかかる一方で、その中身を見ることはできないため、不安は拭えない。特に中学生は反抗期の時期と重なるため、「うちの子みたいなタイプは先生に嫌われそう」と思い、だったら実力勝負の中学受験の方が良いのではないかと考える親は少なくない。
3つ目は「大学受験に対する不安」だ。2021年度から大学入試改革がスタートした。従来の知識重視の入試から、思考力を問う問題へと変わるのは、ご存じの方も多いだろう。しかし、どのようなスタイルになるかはいまだ揺れているのが現状だ。
その不安を回避するために、中高6年間でじっくり大学入試対策をしてくれる私立中高一貫校や、内部進学ができる大学付属校を選ぶ家庭が増えている。早慶やGMARCHなどの難関大学の付属校はこれまでも人気が高かったが、近年はその下のレベルの中堅付属校も受験倍率が高くなっている。このように先々の不安を回避するために、中学受験を選択する家庭が増えているのだ。
「高校から入れる私立上位校」が減っている
中学受験をしなくても、高校から私立の上位校を目指せばいいじゃないかと思う親もいるかもしれないが、ここにも落とし穴がある。中学受験ではたくさんあった私立学校の選択肢が、高校受験になると一気に減ってしまうのだ。
親世代が高校受験をした頃は、多くの私立で高校募集をしていたが、近年、中学受験熱が高まるとともに、6年一貫の教育カリキュラムが確立されていった。6年一貫校であれば、高校受験がない分、中3の段階で高校の勉強へ進むことができる。すると、高2の終わりには高校で必要な勉強をすべて終え、高3では大学受験のための勉強に専念できる。そうやって、多くの私立が大学進学実績を伸ばしてきたのだ。ところが、高校募集をすると、中高一貫生と高校入学生とでは学習の進度が違うため、クラスを分ける必要が出てくる。こうした手間が、高校募集を減らしている大きな理由だ。