「LINEを始めたら、成績が下がった」
近年、中高生の多くがスマホを持ち、友達とのやりとりやSNSの発信、YouTube鑑賞などを楽しんでいる。今はまだ少ないけれど、今後は小学生の多くがスマホを持つようになるかもしれない。スマホを持つと、一日の多くの時間をスマホに奪われ、学力低下につながると言われている。
よく聞くのが、中学生がLINEを始めると成績が下がるというもの。グループLINEの内容が気になって、勉強に手がつけられなくなったり、夢中になっているうちに夜更かしをしてしまい、翌日の学校の授業に支障が出てしまったりするからだ。大人でも常にスマホを触っていないと落ち着かないという人がいるくらいなのだから、自制心がまだ効かない中学生に自己管理させるのは難しいだろう。
スマホによる弊害は、時間を奪われることだけではない。むしろ、私が懸念しているのは、学習の基礎力が身に付かなくなってしまうことだ。特に小学生がスマホを持つと、弊害が大きいと感じている。
「キャッシュレス社会」で失った、数の感覚を学ぶ機会
近ごろ、四捨五入の計算が苦手な子供が増えている。数の感覚がつかめないのだ。その理由の一つとして、小銭を持たなくなっているからではないかと推測する。今の子供たちは塾や習い事に忙しく、家のお手伝いをする機会がほとんどない。ひと昔前なら、「おしょうゆが切れちゃったから買ってきて。余ったお金でお菓子を買っていいわよ」と親から小銭を渡されて、しょうゆとお菓子の値段を見比べながら、いかに自分が得するか考えたものだ。そうやって、小銭の感覚、すなわち数の感覚を身に付けていったといえる。
ところが今は、親自身も現金で買い物をしなくなっている。スーパーの買い物もスマホ決済などキャッシュレスが主流になっている。また、子供にお金を渡すときも、鉄道会社のICカードなどにチャージするケースが増えている。昔と比べて、現金を使う機会が極端に減ってしまっているのだ。しかし、小学生のうちからキャッシュレスに慣れてしまうと、数の感覚が身に付かなくなってしまう。近年、算数の基礎中の基礎である10進数の感覚が理解できない子供が増えているのだ。