ジーユー、イオン、ドン・キホーテなどが相次いで1000円を下回る激安ジーンズを発売する中、以前と変わらず高価格ジーンズの売り上げを保ち続けている店がある。

<strong>阪神百貨店 ジーンズハウス 販売 中村延以子</strong>●1993年入社。年間売上高10億円を誇る西日本最大のジーンズ店のカリスマ販売員。数万円のジーンズを1日10本から15本販売する。
阪神百貨店 ジーンズハウス 販売 中村延以子●1993年入社。年間売上高10億円を誇る西日本最大のジーンズ店のカリスマ販売員。数万円のジーンズを1日10本から15本販売する。

大阪、阪神百貨店3階「ジーンズハウス」。「東の伊勢丹、西の阪神」とも称される西日本最大のジーンズショップで、常に販売実績上位を走り続けるカリスマ販売員がいる。指名客も多いという中村延以子さん(38)だ。

「確かに一時期のインポートデニムの最盛期に比べれば落ち着いていますが格安ジーンズに押されて売り上げが減少、という実感はありません。ユニクロは敵ではない。むしろ陳列の仕方など勉強になることも多いのです。

自分をより魅力的にみせたい女性は、いくつものバリエーションのジーンズを上手に組み合わせています。商品価格は9000円から4万円台まであり、素材やデザイン、加工の多彩さを楽しむには、格安ジーンズでは難しいでしょう」

全国にジーンズショップは無数にある。激戦業界において常にトップを走り続けられる理由は何だろう。

「品数の多さとサービスのきめ濃やかさではないでしょうか。他店では得られないブランドやデザインの細かい知識、意外と知られていないジーンズのお手入れ方法や裾上げのオプション情報など、小さいことですけど、その積み重ねがあってこそ、『年間5万本』販売を達成できているのだと思います。話しただけでも『何かトクした感』をお客様に必ずお持ち帰りしてもらえるようにしています」

女性だけの職場、人間関係はどうやってつくっているのだろうか。

「陰口、悪口は、その人の目の前で言うように指導しています。職場環境を悪くする人間は、絶対に許しません」

そんな姉御肌の一面を持つ中村さんにお客がどう考えても似合わないものがほしいと言い出したらどうするのか、意地悪な質問をぶつけた。

「『素敵です!』とは決して言いません。お客さまの感性の延長線上で、私どもの経験と知識に合うものを根性で3本探し出します。それがプロの販売員たる者の役目です。外部向けに営業ができない私たちにとっては、来てくださるお客様に誠実に対応することだけが唯一の営業方法ですから」