森喜朗氏の失言と後任人事をめぐるゴタゴタが長引いている。理想論を戦わせるのはいいが、東京オリンピック・パラリンピックの開催時期が迫るなか、現実には事態収拾を冷静に進める必要がある。橋下徹氏の考えは? プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(2月16日配信)から抜粋記事をお届けします。

なぜ「川渕会長・森相談役」の人事で収まらなかったか

森喜朗氏の発言の騒動が収まらない。

橋下 徹『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』(プレジデント社)
橋下 徹『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』(プレジデント社)

世論の批判に押され結局森さんは東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長職を辞任したが、その後に元日本サッカー協会会長・元Jリーグチェアマンの川渕三郎さんを後継指名してしまった。ここでまたもや大炎上。

川渕さんはいったんやる気を示すも、白紙撤回。これから組織委員会の理事会において後継の会長選任手続きが始まるという。

僕は前号のメルマガで、「森さんの辞任はやむなし。ただし森さんの力を借りる必要があることから、表看板の新会長と裏方の森さんの2枚看板方式で7月に開催されるオリンピックを乗り切ったらいいんじゃないか」と論じた。

そういう意味では、川渕さんと森さんの2枚看板はいい方向だと思った。

ところが川渕さんへの後継指名が猛烈に批判を浴びた。

密室で決めた!! 正式な選任手続きを踏め!! と。

川渕さんが、正式な選任手続きを踏む前に、あたかも自分が会長に就任したような振る舞いはまずかった。しかも引責辞任する森さんを相談役に迎えることを発表したことにも批判が集まった。さらに川渕さんが男性で、84歳という年齢であることからも、もっと若く、女性の方がいいんじゃないかという意見も噴出した。

そして川渕さんは辞退するという顛末になり、現在、組織委員会の理事会において選任手続きが進んでいる。

川渕さん、しゃべりすぎ!!

本来の人事はある程度のコンセンサスを得た上で、正式な手続きを踏むのが常道だ。ところが川渕さんは、森さんと周辺の有力者との水面下のコンセンサスを、そのまま確定的な決定だと思い込んでしまったのだろう。ここは川渕さんたちの感覚が古かったとしか言いようがない。まあこういうワンマン的な要素のある川渕さんだからこそ、アマチュアサッカー界をJリーグというプロ化に転換する大偉業を成し遂げることができたのだろうが。

うまく手続きを進めれば、川渕さんの新会長、森さんの相談役という2枚看板で収まったのに残念だ。

本番直前! 組織委員会の会長人事に何を求めるべきか?

さて、世間は現在、組織委員会の会長人事に多様性や透明性、世代交代などを強烈に求めているが、僕はそのことに違和感を覚える。というのも、世間が組織委員会に求めるものが、その組織の使命や存在意義とズレているように思えるからだ。

世間が求めている会長像とは、改革の旗手、多様性の象徴、日本が女性の活躍を大切にしていることの世界への発信、選任プロセスの透明性……というところだろうか。

どれもこれも、これからの時代に求められる価値観、諸要素であることに間違いはない。

しかし、だ。

そもそも組織委員会とはオリンピック(およびパラリンピック、以下同)が終了すれば解散する一時的な組織である。そしてその性格は、あくまでもオリンピックを実行するための実務組織であって、社会を変えるための組織ではない。そんな組織委員会をいまさら一から大改革する必要もないだろう。不適切な発言と逆切れ会見をしてしまった森さんを会長職から辞任させれば、あとはとにかくオリンピックを滞りなく実行してくれる会長に就いてもらえればいい。

これからの時代に求められる価値観などは、オリンピック開催都市のリーダーである小池百合子東京都知事が体現すればいいじゃないか。

(ここまでリード文を除き約1300字、メールマガジン全文は約1万1300字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol..236(2月16日配信)の「本論」から一部を抜粋したものです。もっと読みたい方は、メールマガジン購読をご検討ください。今号は《【新時代の権力行使(2)】ヒントは古代中国にあり! 膨張中国にブレーキをかける実践的な方法》特集です。

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