箱根ナイキ着用率、前回210人中177人(81.3%)、今回201人(95.7%)
正月の箱根駅伝は創価大が独走劇を演じると、最終10区には駒大の大逆転劇もあった。文字通り、筋書きのないドラマが詰まっていた。懸命に走る学生ランナーたちの姿に感動を覚えた方も少なくないだろう。
ただ前回と比べると記録水準は期待外れだった。優勝記録は10分以上も下落して、区間新記録は1区間のみ。往路・復路とも向かい風に苦しめられた影響が大きかった。
そのため今回は選手たちが履いているシューズの注目度もさほど高くならなかったが、シューズをめぐる戦いはより“深く”なっていたように思う。
前回の20年大会は出場210人中177人(81.3%)がナイキを着用していたが、今回も王者は強かった。出場210人中201人がナイキで出走。その着用率は95.7%まで到達した。
箱根駅伝でアシックスを履いた選手が消えてしまった
ナイキ以外のメーカーはわずか9人。なかでも今大会はアシックスを履いていた選手がいなかったことに驚かされた。
筆者が大学時代(95~99年)はアシックスとミズノが2大勢力だった。ナイキ厚底シューズが登場する前の17年大会でも出場210人のうち、アシックスが67人(31.9%)、ミズノが54人(25.7%)、アディダスが49人(23.3%)、ナイキが36人(17.1%)、ニューバランスが4人(1.9%)というデータが残っている。
アシックスはわずか4年で首位から陥落しただけでなく、箱根路から姿を消したのだ。他のメーカーでいうと、ミズノは前回10区で区間記録を打ち立てた嶋津雄大(創価大)が4区で活躍。区間賞には届かなかったが、日本人トップの快走を見せている。
5本指カーボンを搭載した“新厚底”の「アディゼロ アディオス PRO」でナイキからハーフマラソンの世界記録を奪ったアディダスも思った以上に伸びなかった。アディダスとユニフォーム契約を結ぶ青学大ですら9区飯田貴之が着用していただけで、他9人はナイキを履いていた。
そのなかで一矢報いたかたちになったのがニューバランスだ。7区佐伯涼(東京国際大)が「フューエルセル5280」というモデルを履いて区間賞(他9人はナイキ)をゲット。同シューズは厚底ではないが、カーボンファイバープレートを搭載。伸縮性のあるアッパーも特徴的で、短い距離での高速レースを想定したモデルになる。
ナイキ厚底シューズが速すぎたこともあり、昨年4月30日以降は世界陸連のルール改定があり、「靴底の厚さは40mmまで」に制限されている。
今大会はソールにプレート(カーボンファイバーなど)の入っていないシューズを履いている選手はほとんどいなかった。厚底がノーマルとなり、各社とも4年前とはまったく異なる新モデルを続々と投下している。そうした中で、ナイキだけがシェアを拡大し、完全なひとり勝ちをしている。