4月28日に行われたロンドンマラソンで、ナイキの新型シューズ「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」を履いた選手が1~5位を独占した。スポーツライターの酒井政人氏は「新型はソールがさらに厚くなった。価格も1620円上がったが、トップランナーだけでなく市民ランナーの“厚底率”も、さらに上がるのではないか」と指摘する――。

ナイキの「新・厚底シューズ」が1~5位を独占

ロンドンマラソン2019で優勝したエリウド・キプチョゲ選手のゴールシーン(写真=ナイキ提供)

現在の男子マラソン世界記録は、2018年9月のベルリンでエリウド・キプチョゲ(ケニア)が樹立した2時間1分39秒だ。それまでの世界記録(2時間2分57秒/14年)を一気に1分18秒も上回る驚異的な数字である。

しかし、筆者はまだまだ短縮できると確信している。その最大の理由は“世界最速シューズ”がさらに進化を遂げたからだ。

2017年に「ズームヴェイパーフライ4%」というナイキの厚底シューズが登場して、世界のマラソンは“ナイキ色”に染まりつつある。2017年と2018年のワールドマラソンメジャーズでは、トップ3の男女合計72人のうち、実に42人がナイキの厚底シューズを着用。日本記録を塗り替えた設楽悠太(Honda)と大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)も同シューズの愛用者だ。

ナイキの厚底シューズは何がスゴいのか。

ここで改めて考察したい。まず、挙げられるのはこれまでの常識を一変させたことだろう。従来のレース用シューズは「軽量化」に重点が置かれていたため、ソールは薄底が中心だった。しかし、トップランナーから、「クッショニングがしっかり装備されているシューズがほしい」という要請を受けて、ナイキは新たな視点でシューズを開発。「クッション性」と「速さ」を兼ね備えた“非常識”ともいえる厚底シューズを世に送り出した。

好記録続出、前モデルと何がどう違うのか?

上位選手すべてがナイキの新・厚底シューズを履いていた!(写真=ナイキ提供)

そして、4月28日に行われたロンドンマラソンでナイキは新・厚底シューズを投入。早くも世界に衝撃を与えている。

この大会で、男子はキプチョゲが世界歴代2位のパフォーマンスとなる2時間2分37秒で優勝。ネット・ゲレメウ(エチオピア)が2時間2分55秒、ムレ・ワシフン(エチオピア)が2時間3分16秒をマークするなど、好タイムでトップ5を独占したのは、すべてナイキの新・厚底シューズ着用者だった。

彼らが履いていたグリーン色のシューズは、4月24日に発表された「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」というモデル。以前、キプチョゲが世界記録を樹立したときに履いていた「ズーム ヴェイパーフライ4% フライニット」は、前モデルからアッパー部分を伸縮性のあるフライニットという布地に変えただけだったが、今回はかなりアップデートした。

優勝したキプチョゲは自身が持つコースレコード(2時間3分5秒)を28秒も短縮。2位のゲレメウは1分5秒、3位のワシフンは1分21秒も自己ベストを更新している。これは新シューズの威力といえるかもしれない。