上司や先輩に対して丁寧に接しているつもりでも、無礼と思われる言葉がある。人気の国語講師・吉田裕子さんは「『プレゼン上手ですね』『奢らせて下さい』『頑張って下さい』といった言葉は無意識に使いがちだが、実は目上の人に使うと失礼にあたる」という――。
※本稿は、吉田裕子『[新版]大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
「先輩、僕が奢りますよ」は失礼?
「したたか」
× 先輩もなかなかしたたかな人ですね。
× 先輩もなかなかしたたかな人ですね。
「強か」と書きます。もともとは、「したたかな後見役」のように「確かである」というよい意味にも使っていたのですが、近代以降、「一見そうは見えないが、実は相当のやり手で、なかなかこちらの思い通りにならない人」という意味が一般化しました。多くの人が、腹黒さ、狡猾さを連想するようになっています。
〈point〉確かでしっかりしているさまを「芯の強い」「ぶれない」「たくましい」などと表しますが、面と向かっては言いません。
「奢る」
× お礼の席なので、ここは私に奢らせてください
× お礼の席なので、ここは私に奢らせてください
「奢る」はもともと、「驕る」と同じく「人よりもよい状態にあることを得意気に思う」という動詞で、調子に乗っているという否定的な意味合いの強い語です。お金があることを誇示して他人に飲食をふるまうところから、今の「奢る」の使い方が生まれています。そういう語源を知ると、目上の人には使えませんね。
〈point〉目上の人にふるまうことを申し出るには「こちらで持たせてください」と言うのがいいでしょう。